ハニの戸惑い 4
社会科学部はパラン高校の7クラスと言われているだけに、ハニに対する敵意丸出しの視線はある程度和らいでいた。
「おめでとう」
と普通なら言って祝福をしてくれるはずだが、結婚をするという報告と一緒に妊娠している事が判ると、数人はあまりいい顔をしていない事に気が付いた。
「可愛い子が産まれるといいね。」
「気分が悪くなったら言ってね。」
何人かに声を掛けられた時は、一人ボッチじゃないと思えて涙が出て来た。
お腹の中にいる子供はまだ小さくて、形さえ分からない。
授業中だったけど、ミナからのメールが届き「ハニの妊娠をジュリに話したら、仕事を抜けて私に会いに来てくれる」と言ってくれていた。
ミナとジュリは私がどんな時でも、いつも変わらないでいてくれる。
「じゃあ、またね。」
「ハニ、ペク・スンジョに大切にしてもらってね。」
「結婚式はお祝いに行くからね。」
授業が始まる前に、話しかけるのを躊躇っていた人たちにも声を掛けられたら、なんとなく気分が晴れて来た。
走らない、慌てない、階段は使うな、エレベーターで移動しろ。
スンジョ君が朝出掛けに行ってくれた事を、心の中で言いながらエレベーターのボタンを押した。
スンジョ君に会いたいな。
会えない事は分かっている。
医学部棟は、私のいるこの棟とは反対。
スンジョ君は、わざわざ私に会いに来る事はしないから。
「あっ!」
「よぅ!」
開いたドアに顔を上げると、エレベーターにスンジョ君が乗っていた。
「移動か?」
「うん、ミナがジュリに連絡してくれて、今から会うの。スンジョ君は?」
何だかスンジョ君は少し照れたような顔をしている。
みんなが私達の方を見て、ヒソヒソと話しているからだ。
「乗れよ。」
スンジョ君に腕を引っ張られて、締まる直前にエレベーターに乗った。
「お袋が掲示板に張り出したから、みんなに冷やかされたよ。ハニはどうだった?」
「うん・・・・別に・・・なにも・・・・」
「隠すなよ、頬を叩かれたんだろ?」
「知っていたの?」
「ああ、ジュングから聞いて・・・それでハニが心配になって来たんだ。」
途中でドアが開いて、何人かが乗り込んで来た。
スンジョは、ハニを自分の方に引き寄せて守るように肩に手を廻していた。
ヒソヒソと話し声が聞こえて、それがハニをバカにしている事だと分かる声が聞こえて来た。
「気にするな。」
正面を向いたままスンジョは小さな声でそう言うと、急に今度はハニをグッと抱きしめた。
さすがに後ろを向いていても、エレベーターのドアに映る陰で、ハニとスンジョの距離の近さに、その人たちは黙り込み、一階に着くと開いたと同時に駈け出すように降りて行った。
「なっ?こうすると、みんなオレ達の傍からいなくなるから安心だろ?」
スンジョは、いつもミナ達とよく話をしているところの近くまで、ハニと一緒に歩いて行った。
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