声を出して 36
気を利かせて母屋の方に案内をしてくれたのはいいけれど、おじさんもおばさんも来ないと緊張してくる。
何かを話さないといけないと思っていれば思っているほど、緊張して心臓が止まりそう。
「ゴクンッ!」
スンジョはハニがつばを飲み込む音に、一瞬ビックリした顔をして目を丸くした。
「き・・き・・・緊張していないから。」
「クスッ・・」
スンジョは何も聞いていないのに、そう答えるハニがおかしかった。
緊張している事をハニが否定しても、スンジョにはお見通しだ。
「私、考えたんだけどね・・・・スンジョ君が指輪やドレスを選ぶ時、あんな態度をした事を怒ったけど、私がいけなかったと思ったの。」
「じゃあ、予約したドレスと取り置いてもらった指輪をキャンセルするか?」
「そっ・それは出来ない・・・・指輪はともかく、ドレスは支払いを済ませて来ちゃったし・・・」
「冗談だよ。指輪はあれでいいよ・・ハニが気に入ったので。」
「本当?」
「ぁあ・・・ドレスも、あれ・・・結構似合っていた。」
スンジョからそんな言葉を聞けるとは思ってもいなかった。
「オレも店であの態度は良くなかったと思っているけど、他人の気持ちは物や形ではない事をハニが一番知っている事だと思う。」
「ゴメンね・・・・」
「謝らなくてもいいさ。女の子なら、ああいった物に胸をときめかせることくらい、そう言うのに疎いオレでも判っているから。お袋が決めた結婚式で、日にちがあまりないから急がないといけない事も判っている。でもさ・・ハニのお父さんには高3の時に同居していたから、オレが結婚をしたいと言った時に許してもらったけど、ハニをこの世に産んでくれたお母さんと、お母さんが亡くなった後、育ててくれたおばあさんには挨拶もしていなければ、オレの気持ちを伝えていなかったから、それを済ませない事にはいけないのじゃないかなと思ったんだ。」
スンジョ君のその気持ちを聞けただけで、ドレスも指輪も無くてもいいからとそう思ったけど・・・
やっぱりドレスも指輪も欲しい・・・・
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