スンジョの戸惑い 60
なんだか腑に落ちない。
こうも偶然が続くか?
バスの座席もハニの隣で、自由行動の1組と7組混合のグループもハニと同じ。
それに関わっている人間は、トッコ・ミナにチョン・ジュリ。
ハニの親友で、お袋と妙に気の合う二人。
肩に掛かる重みで横を向くと、ハニがバスの揺れが眠気を誘ったのか、生理の時は眠くなるからなのか、頭をスンジョの肩にもたれかけさせて眠っていた。
スースーと気持ちよさそうなハニの寝息。
少し開いた口から見える白くて綺麗なかわいらしい歯。
今にもヨダレが垂れそうで・・・・・・ ふっくらした唇が妙に刺激的で、そっと周りを見廻しても誰も自分達の方など見ていない。
スンジョは、引力に逆らうことなくそのままハニの唇に触れた。
「うーん・・・・」
スンジョはハッとしてハニから離れた。
「スンジョ君?」
「何だよ、ヨダレが垂れそうだ。
慌てて口元を拭うハニを見ると、気分が楽しくなる。
ハニと一緒にデパートに行くと、仲がよさそうに品物を見ているのを店員によく親子と間違われたと言っていた。
実の息子のオレよりも、ハニの方がよく気の会う親子と思われた事が嬉しそうだった。
「スンジョ君・・・どうしたの?」
キョトンとした顔で聞いてくるハニ。
ハニは知らないだろう。
オレはハニのその表情に、結構グラッと来る事を。
「何でもない。明日の自由行動の集合時間は判っているだろうな。お前はのんびりしすぎて、いつも時間にギリギリだ。速めに準備をしろよ。」
スンジョはそう言うと宿泊先であるホテルの車寄せにバスが停まると、ハニの前を通ってバスを降りた。
「大部屋っていいよね。これが修学旅行の一番の楽しみだよね。」
「そうそう。女の子同士色~んなお話が出来るからね。」
女子が集まれば明日の自由行動の服の見せ合っこ。
ズラリとハンガーに掛けられた私服のお披露目会。
「ハニ、この服って高いでしょ。」
「おばさんが買ってくれたの。靴から全部買ってくれたの。」
「へぇ~、でもさ・・・・・これってなんだか変だよね。」
「何が?」
ファッションに興味のある一人のクラスメートが、ジャケットの両方のポケットのプリントをじっくりと眺めていた。
「ほら・・・・・右のポケットは<VE>左のポケットは<LO>このデザインってカップルで着る様に作られているんだよ。」
良く見ないと判らないくらいに小さなプリントで、目を凝らさないと判らない物だ。
「偶然だよ。だって私には付き合っている人はいないんだから。」
「そうかな・・・・・」
ミナとジュリも新婚旅行でもないから、まさか自由行動でグミがなにかしかけるようなことはしないとは思っていたが、ハニがグミに買ってもらったと言うジャケットを見て、自分たちにも話していない何かを計画されているのではないかと思った。
翌日、私服に着替えてロビーに出ると、何名かの生徒が既に集まっていた。
「ハニや~。残念だな、別のグループで。気をつけて見てくるんやで。」
ジュングがそう言った時ロビーにいる生徒たちはハニを見てざわめくと、その視線がハニと誰かに向けられているのに気が付いた。
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