スンジョの戸惑い 59
ハニは余程それが気に入ったのか、嬉しそうにストラップを翳して(かざして)はひとりで笑っていた。
「フフッ・・・・フフ・・・・・・」
「何がそんなに嬉しいんだ?やたらと光り過ぎだろう。」
「だって・・・・スンジョ君が・・・・・」
ハニがスンジョに買ってもらったと言いそうになったとき、スンジョは指を立てて絶対に誰にも言うなと合図を送った。
ハニが大事そうに持っているペアストラップは、大好きなスンジョとのたった一つだけのペアグッズ。
スンジョがそれを付ける事などないと判っていても、ハニは自分の持っているペアストラップの片方がスンジョの所にあると嬉しくなった。
「生理痛はもう大丈夫みたいだな。」
「うん・・・・スンジョ君が温かい方の座席を譲ってくれたから・・・・それに、さっき先生から薬も貰ったの。」
どれくらいぶりだろうか、スンジョとハニがこうして話したのは。
アインと公園で会ってから、スンジョは口を利いてくれなかったし、修学旅行の集合場所の学校に行くまで元に戻りかけていたのに、偶然にまたアインと会ってからまた不機嫌になっていた。
結局、スンジョの不機嫌が治まりかけたのに復活していた。
「スンジョ君・・・・自由行動は何班なの?」
1クラスと7クラスでそれぞれに三人づつのグループを作り、1クラスと7クラス合同のグループでの自由行動。
「オレ?オレは5班だ。」
「う・・・・うそ・・・・・・・・」
「何がうそだ。ほら、このしおりを見ればいいだろう。」
スンジョは自分のカバンから、小冊子を出してハニに見せた。
「本当だ・・・・・スンジョ君・・・私ね・・・・私も5班なの。」
そうこのグループ分けもミナとジュリが細工をしていた。
一方、ペク家ではグミがパソコンに向かって写した画像を開き楽しそうだった。
「ママァ・・・・オヤツが食べたいんだけど、何しているの?」
パソコンの画面を覗こうとしたウンジョが見た物は兄スンジョとハニが写っている写真が何枚もあった。
そのどれもは、正面を向いて笑っている物ではなくて、横を見ている物や望遠で写した物ばかりだった。
それでも無愛想なスンジョが幸せそうに温かい笑顔でハニを見ている物ばかりだった。
ハニはスンジョのそんな視線に気が付いていない。
そう・・・それは隠し撮りの写真だから。
「ママ・・・・これ・・・・・」
「お兄ちゃん、いい顔で笑っているでしょ?ほら・・・・このバスの中の写真・・・・ミナちゃんとジュリちゃんに協力してもらったの。それと、これもよ。」
グミは届いたばかりの添付ファイルを開いてウンジョに見せた。
「ママ専属の特派員がいるから、修学旅行に付いて行かなくてもいい写真が沢山届くのよ。」
グミはニンマリと笑って画像を編集し始めた。
そのグミのやり方と表情を見て、ウンジョはその想いもよらない行動に身震いした。
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