スンジョの戸惑い 58
ハニの腕を強く掴んで、誰かが勢いよく引っ張った。
倒れ込むようにその人にぶつかって、目の前に見えるのはパランの制服。
「それにするのか?」
聞き覚えのある声に顔を上げると、スンジョがハニに声を掛けていた男子学生を見ていた。
「ス・・・スンジョ君・・・」
「土産を選ぶのにどれだけ迷うんだ。バスに乗り遅れるぞ・・・・」
ハニが手に持っていたストラップを取り、スンジョはキャッシャーの所までハニを連れて歩いて行った。
「アイツ・・・スンジョって言ったな。」
「おい、知っているのか?」
「アイツだよ。IQ200の天才。パランのペク・スンジョだ。」
その会話がハニとスンジョの方にも聞こえて来た。
「目ぇつけられたかもしれないぞ。早くこの場から逃げよう。」 スンジョに殴られると思い、ハニを囲んでいた生徒たちは慌てて逃げて行った。
キャッシャーでスンジョは会計を済ませると、ストラップの一つをハニに渡した。
「ホラッ・・・・」
「くれるの?私に・・・・」
「欲しかったんだろう?」
飛び切り嬉しそうな顔でうなずくハニは、スンジョに笑いかけた。
無感情でいても、このキラキラした笑顔にスンジョは弱かった。
ハニは不器用な癖に、こういったストラップを簡単に取り付けて、視線より高い所に上げて光に透かして見ていた
さすがにペアのストラップは、スンジョには付けてもらえないとハニは思いながら、チラッとスンジョの方を見た。
スンジョはハニとペアになるストラップを、ハニが思った通り付けないで、無造作にカバンの中に入れた。
「ボケーっとしてるから、変な奴らに声を掛けられるんだ。」
相変わらず冷たい言い方のスンジョだったが、それでも口を利いてくれるだけでハニは嬉しかった。
「スンジョ君・・・・・喧嘩強いの?」
「何で?」
「さっきの人達、スンジョ君の顔を見て、逃げて行ったから・・・・」
「オレは喧嘩はしない。どこかで噂でも聞いたんだろ?」
スンジョは停車しているバスに向かって足早に歩くと、ハニは少し焦って付いて行った。
「なんか、上手く行ったみたいだね。」
「本当だよね。最近、ハニったら塞ぎこんでいたから・・・・」
「バイト代を貰って、まさかクジを操作したなんて、誰にも言えないね。」
二人は物陰から、スンジョとハニの後ろ姿を見て違う方向からバスに向かった。
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