スンジョの戸惑い 91
「カメラ、ビデオカメラ、三脚、バッテリーパック、メモリーカード・・・・」
「ママ、また一段と本格的だね。そのカメラは、見たことがないけど・・・・」
「昨日、買って来たのよ。画素数が多くないと、リアル感がないから。」
「ウンジョも小学生になったら、そんなに撮す機会も少なくなったんじゃないかね?」
グミは、とんでもないと言うように首を横に振った。
「何を言ってるのパパ!もうすぐ孫が生まれるかもしれない・・・いいえ!生まれるのよ!」
_____ えっ?
あっけらかんと言うグミの発言に、スチャンは飲みかけていたコーヒーを吹いてしまった。
「パパ、お兄ちゃんとハニちゃんわね・・・・・そういうお付き合いしているみたいなの。」
「何を言うんだよ。ハ二とオレはそんなんじゃない!」
「そうです、おばさん。私たちはそんな・・・・・・」
「あら?そうかしら?この間ハニちゃんとお兄ちゃんは・・・・・・フフフ。だって・・・・ハニちゃんの首にキスマークが・・・・・・・・」
スチャンはウンジョの耳を急いで塞いだ。
「ママ・・・そういうことは・・・・・それに二人はまだ高校生だよ。」
「パパッたら・・・・・私は高校を出て直ぐに結婚したんだもの、そんなこと言えないんじゃないかしら?お兄ちゃんだって若くて健康な普通の男の子だから、こぉ~んなに可愛いハニちゃんが同じ家にいたら・・・・・・」
「この間のはそういうのじゃない。行くぞハニ。」
「逃げるの?お兄ちゃん。ハッキリ言いなさいな。ハニちゃんとは・・・・・・」
「うるさいな。ハニとはキスだけだ。余計なことをするなら、むやみに学校に来るんじゃないぞ。」
グミは先日のスンジョの意味ありげな言葉を、思い違いをしたまま信じていたのだった。
パラン高校学際の目玉とも言える二年生の舞台作品。
毎年7クラスが優勝するのが恒例だった。
「ジュング・・・・・お・・・おかしすぎて・・・・・笑わないで出来るのか判んないよ・・・・・・」
「そう言わんでくれよ・・・・・・オレだって・・恥ずかしくて・・・・・・」
7クラスはジュングのオーロラ姫に、学際の練習が始まると笑いを泊める事が出来なかった。
「でも、ハニのフィリップ王子は結構いい感じ。」
「そうかな?ジュリのメリーウェザーもミナのフローラも、すっごく良いよ。」
その時、ジュングの取り巻きの一人が廊下を騒々しく走って来た。
「大変だ!今年は7クラスの優勝は難しくなって来たぞ。」
7クラスの賑やかな声も、その一言で一同に静まった。
「1クラスで主役に変更があったんだ、主役が、な・・なんと・・・・・・・」
「ペク・スンジョだ!!!!」
ハニはスンジョからは裏方だと聞いていた。
1クラスの出し物は<スノーホワイト>
つまり<白雪姫>で、主役は女装をしないといけない。
スンジョには誰にも言えないブラックな過去があるが、それを知っているのは学校ではハニだけ。
ブラックな過去を隠したいスンジョがどうしたのかと考えても、それを受けた理由を聞く事が怖いくらいだ。
だから、すんなりスンジョが主役を受けたはずはない。
ジュングのオーロラ姫と、スンジョの白雪姫。
どちらがはまり役かは誰もが直ぐに判る。
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スンジョが白雪姫を代役で出ることになるまでは、順調には進まなかった。
学校に来て直ぐに代役を立てないといけないと言うことを聞いた。
「スンジョ、お前台本を全部覚えているだろう?」
「ああ・・・全部覚えている。」
カバンをロッカーに入れて鍵を掛けていると、文化祭委員のジュノが聞いてきた。
「頼む!!!主役の白雪姫をやるミンジュが休んだんだ。」
「だからなんでオレがやるんだよ。他の女子でやればいいだろう。」
スンジョは嫌な予感がしていた。
「白雪姫のセリフは言えても、顔が・・・・・まずいのばかりでさ・・・・やっぱり<この世で一番美しい>そのセリフで納得できるのは、お前しかいないんだ。」
無視をして歩いていても、ジュノはしつこく付いて来る。
教室に入いった途端スンジョは数人の男子たちに取り押さえられた。
「何すんだよ!!止めろよ!!」
制服を脱がされ白雪姫の衣装をあっという間に着せられた。
「いい!なっ!どうってことない女子がやるより、スンジョの方がうんと美しいと思わないか?」
「うんうん、かつらを被せてみようか。」
苦痛だった。
スンジョには人に言えない、ブラックな過去がある。
ブラックな過去・・・・・それは、思い出したくもない幼稚園の時まで自分の意思と反対に、女の子として育てられていたこと。
そこらの女の子よりも目がクリッとしていて、色が白く何とも言えない可愛い顔をしていたため、女の子が欲しかった母親の思いだけで可愛らしく着飾ってカメラに向かって笑顔を振りまいていた。
「おっ!いいジャンいいじゃん。主役のミンジュよりも綺麗だぞ。」
「イケメンは女装をしても美人になるんだな。ほらスンジョ!だ、」
渡された手鏡を受け取ったが女装をした自分の顔を見たくもない。
「見なくてもいい・・・・・お前ら覚えとけよ。」
女装をしたスンジョが通ると、スンジョファンの女子の視線は固まっていた。
我に返ったスンジョファンの女の子は、スンジョの出で立ちにガッカリするより惚れ直したとばかりにそれぞれのクラスに戻ったり、他の人たちにスンジョが代役で女装をして出ると言うことを伝えに行った。
「二年1クラスのペク・スンジョが白雪姫の代役で出るんだって。」
一人の女の子がスチャンとグミとウンジョの横を走りすぎた。
「パパ!聞きました?スンジョが女装をするみたいね。それも主役を・・・・・・パパ!ビデオにカメラも一緒につけなきゃ!」
グミは張り切って舞台が行われる講堂に急いだ。
「鏡よ鏡、この世でい一番美しいのは誰?」
<それは、白雪姫>
そのセリフの後、暗い舞台に立っている白雪姫の扮装をしているスンジョにライトが当てられた。
その瞬間、講堂内は割れんばかりの歓声が響き渡った。
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