小さなライバル達(スンハ) 56
「どうかしたの?」
<ダメだ!お前がいない事に気が付いて、泣き出して手が付けられない。>
「手が付けられないって・・・・・スンリはそんなに手が掛かる子じゃないのだけど・・・・・・・」
<いや・・・・手が掛かるとか・・・・・・スンリ・・・・待つんだ!!・・・・いいからすぐに戻って来てくれ。>
そう言い終るとすぐに一方的に電話が切れた。
「アッパ・・なんだったの?」
「判んない・・・・・あんなに慌てたアッパは初めてよ。とにかく家に帰ろうか。また今度買い物に来ればいいから。」
そうはいってもすぐにはタクシーは見つからない。
バスを乗り継いで帰った方が、早く帰れるように思えた。
時間通りに来ないのがいつもの事で、バスは珍しく今日は定刻通りに到着して二人は乗り込んだ。
中途半端な時間だから、座席は空いていて並んで腰かけた。
「あっ!」
スンハが突然、大きな声を挙げた。
「どうしたの?」
「ううん、何でもない。」
スンハは一つの事を思い出した。
それは二人で決めた兄弟同盟の事だ。
チラッと横に座る母の顔を見るが、母は大好きな父が慌てている様子が気になって仕方がないのか落ち着いていられなかった。
スンリ・・・・オンマに似てバカ正直なところがあるから、兄弟同盟を発令しちゃったんだ。
スンミはどうしてるかな?
アッパが家にいるから、おばあちゃんはミアおばさんとウジョンと一緒に出掛けているかもしれない。
バスは自宅近くの最寄りの停留所に到着した。
「オンマ・・・・私先に帰るね。」
「そうね。先に帰って、アッパを助けてあげて。」
スンハは勢いよく走りだした。
スンジョの運動神経とハニの脚の速さを受け継いでいるからなのか、スンハの走るスピードは速く、あっという間に遠くになって行った。
門の暗証番号を開けて玄関に通じる階段を一つ置きに駆け上がり、ポーチにたどり着くとスンリが何やら大きな声で父に話している様子と、スンミが母を恋しがって泣いている泣き声が聞こえた。
「スンリ!お姉ちゃん帰ったから、もう止めなさい!」
鶴の一声でスンリはスンハの声を聞いて、大きな声で父にどなっていたのを止めて振り返った。
「お姉ちゃん!お帰り。」
スンリの下からスンジョが起き上がりながら、自分の上に乗っているスンリを横にどかした。
その父の姿は、いつものかっこいい父ではなく、やんちゃな息子に押さえつけられてヨレヨレとしていた。
「ただいま・・・・・プッ!スンジョ君・・・・・なんて恰好なの?初めて見るよ、そんな姿は・・・・・・クスクス。」
髪の毛は乱れ、服はボタンが引きちぎられ5歳の息子に良いようにされたスンジョの情けない姿に、ハニはお腹を抱えて笑い出した。
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