明日はまだ何もない明日(スンミ) 最終話
スンミが突然大学を辞めてしまい、ヒョンジャと一緒にアフリカに行ってから半年・・・・・・は経っていないが、家の中が広くて淋しく感じる。
元々、スンハやスアと違って口数も少なく静かな女の子だった。
大人しいスンスクと仲が良かったのは、その静かな性格だと思っていた。
が、それは違っていた。
やはりスンミはあのオ・ハニの娘で、ファン・グミの血を引く孫だということ。
自宅出産のしかも早産で、もしかしたら助からないと思って抱いた出産直後のスンミを、オレが守ってあげなければ助からなかったと大きな関違いをしていただけかもしれない。
生れた時から外見だけはハニとそっくりだったのもあるが、普通は助からない命なのに成人するまで何も起きなかった事は、もしかしたらハニの様にトラブルメーカーな娘だったのかもしれない。
「スンジョ君、郵便が来ていたんだけど・・・・・荷物が多くて置けないの・・・・・取ってくれる?」
「またお前はどれだけ買い込んだんだよ。ミレはまだ離乳食も摂れないだろう。」
「だって、スンギったら買って来た食材を全部使っちゃうんだもの。」
「でも、スンギが食事を作ってくれるから、仕事とミラの看護で助かっているだろ?」
ハニの抱え込んでいる荷物をダイニングテーブルの上に置き、郵便物の束をスンジョは受け取った。
その郵便物の中で一番にスンジョが探したいのは、スンミからのエアメール。
だが、その中にはスンミからのエアメールを見つける事が出来なかった。
そそっかしいハニの事だから、どこかに落としていないかリビングから玄関口まで見るが落ちている形跡はない。
「ちょっと、本屋に行って来る。」
門の郵便受けからここまでの間に落ちている可能性もあるが、天下のペク・スンジョがそれを探しに行くと言う事はどんな事があっても言えない。
「待って・・・・スンジョ君・・・私のカバンの中に、大きな封筒があるの・・・・配達員の人とさっき門で会ったのだけど、折り曲げ厳禁と書いてあったから、手渡しだって・・・・・・」
スンミからだ!
ハニのカバンを奪い取って、その封筒を取り出したいが・・・オレはペク・スンジョでオ・ハニではないから出来ない。
「自分で出せよ。」
「そんな事を言わないで・・・・アイスクリームや冷凍食品が溶けちゃうからフリーザーにしまいたいのだけど・・・・入らなくて。」
「アイスクリームばかり買うからだ。スアとスングの為だとか言って、お前が一番食べているだろう。」
オレの妻がオ・ハニで良かった。
勘のいい妻だったら、オレが嬉しくて仕方がないのが声で読み取るだろうし、ここにお袋がいないのも助かる。
ハニのカバンの中にある封筒・・・・・・間違いなくスンミからだった。
が、悲しい事にオレ宛でではなくハニ宛。
どれだけスンミを大切にしていたのか・・・・・気に入らない男と結婚をさせたくないから、オレの教え子の中で一番信頼できるキム・ヒョンジャと出会わせてやったのか、娘には判らないのだろうか。
「ねぇ、なんて書いてあるの?ミレのオムツも換えてあげないといけないから、代わりに読んでくれる?」
「お前宛だけど・・・・・いいのか?」
「何よ・・・いつも勝手に開けないでと言っても、開けているくせに。」
「あれは・・・・・・」
あれは確かにオレが勝手に開けているが、スンギやスアとスングの学校からの手紙で、ハニが難しい事を読むのが面倒だからと言っているからだろう。
封筒を開けると厚紙に挟まれた物が入っていた。
ユックリそれを引き出すと、ウエディングドレスのスンミが写っている写真が入っていた。
撮影した人物はファン・グミ。
スンミがアフリカに発った一ヶ月後に、アフリカに撮影旅行に行って来ると言っていた。
スンハの様にこの手でスンミを伴ってバージンロードを歩きたかった。
ショートカットの髪に長いベールとこれでもかと言うくらいにレースが使われたウエディングドレス姿。
涙が出て来た。
こんな思いをするのなら、いくら気に入ったヒョンジャだと言っても見合いをセッティングする時期が早かったと思ってしまう。
「スンジョ君・・・何だった?・・・・・・あら・・手紙が落ちている・・・・」
写真を取り出した時に落としてしまったのか。
ハニがその手紙を拾っている間に、見つからない様に目頭の涙を拭いて新聞を読むフリをした。
「写真・・・・・・さすがお母さん・・・綺麗に撮れているわ。スンジョ君、見た?」
「見た。髪が短いから、あのドレスは似合わないな。」
「仕方がないじゃない。まさか髪の毛を切るなんて思わないで、お母さんと二人でドレスを選んだのだから・・・手紙・・・読むね・・・あれ?スンミじゃなくてヒョンジャ君が書いてる。」
「別に誰が書いた手紙でもいいだろう、ヒョンジャはスンミと結婚したんだから。」
早く読んでくれと言いたいが、ハニにオレが焦る姿を見せたくない。
「お義父さん、お義母さん・・・えっ?・・・・嘘・・・・・・冗談だよね・・・・」
そう言ったきりハニは黙り込んでしまった。
まさか、結婚数ヶ月で離婚?
「こっちに見せろ。」
お義父さん・お義母さん、結婚後最初に出す手紙でこんな事を報告する事になって申し訳ありません。
自分でもどうしていいのか判らず、ドレスを撮影してくださったおばあ様にも伝える事も出来ませんでした。
勿論、おばあ様にお伝えするのは順番として間違っていると思います。
お義父さんとお義母さんにお伝えする前に、実家の両親に伝え、すぐにこちらに来て貰いました。
お義父さんは父をご存じなので、その事を信じてくださると思いますが、スンミが妊娠してしまいました。
スンミの身体の事を思い、妊娠は避けるつもりでしたが、避けきれませんでした。
申し訳ありません。
こちらの医師で信頼出来る人物に担当をお願いしています。もし、スンリの奥さんであるソラさんと生まれた子供の体調が良ければこちらに来て貰えるように話していただけませんか?スンリはお義父さんの次くらいに優秀な外科医として信頼しています。万が一の時はスンリにお願いしたいので、許可していただけませんか?
出来れば、お義父さんには来ていただくのは申し訳ないので。
「スンミが妊娠したの?で・・・何ヶ月だと書いてあるの?」
「7ヶ月だそうだ。」
「7ヶ月って・・・・・・こっちを出た時は妊娠していたって事?」
「みたいだ。ここにヒョンジャのお父さんの診察結果も書いてあるから間違いがないのだろ。」
イチ・ニ・サンとハニは指を折って何か数えていた。
「7ヶ月って・・・・・・静養所にいる頃よ。スンジョ君が妊娠はダメだという前の時・・・・・・・・直ぐにアフリカに行かないと。」
「スンリに来て欲しいようだが・・・・・スンリはソナがまだ小さいから行けないだろう。ハニ・・・・病院に連絡するからアフリカに行って来る。」
「私は行けないな・・・・・・ミラの事があるから。」
「ヒョンジャのお母さんが行っているから、ハニが行かなくても人手は足りる・・・・すぐに準備するよ。」
「キム先生、アッパに手紙を書いたのはいいけど、どうしてスンリお兄さんがいいの?」
「判るだろう。妊娠はダメだと言われていたのに、医師が避妊も出来ないなんて分かったら何を言われるのか恐ろしくて頼めないよ。スンリには一応教授に連絡をする前に頼んだけど・・・・・・・・・・」
「仕方がないよ。だって、妊娠はダメだと言われる前に・・・しちゃったから・・・・・私だって、アッパがスンハお姉さんとお前は違うから問題を起こさなくて安心だって言われていたから・・・判った時に大学を辞めてすぐにアフリカに行こうって決めたのよ。」
「アフリカに来てからスンミがオレに言うのにも驚いたよ。よく長時間のフライトで、何も起こらなくて良かったよ。」
スンミはパソコンにメールが届いた事に気が付くと、それを開いて驚いた。
「先生・・・・・こっちに来るのはお兄さんじゃなくて、アッパだって・・・・・・どうしよう・・・・・」
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