スンスクの春恋(スンスク) 2
あの女の人の事を、先生は知らないのだろうな。
あんなにきれいな心をした先生の事を、あの人は裏切っていたんだ。
先生・・・・・先生・・・僕が先生を励ましてあげるよ。
スンスクはまたミラの病室に戻った。
ドアノブに手を掛けて静かに開けると、ミラはこちらに背を向け声を出さずに肩を震わせて泣いていた。
僕はそんな先生に声を掛ける勇気も術もない。
こんな時、お父さんや兄さんはどんな声を掛けただろう。
スンスクはドアを静かに締めて病院を出た。
ドキドキと心臓が鳴っているのが、すれ違う人に聞こえてしまうのではないかと思って、思わずすれ違った人を振り返った。
「聞こえるはずがないな。お父さん、あなたならどうしますか?お母さんが、もし病気になったら別れますか?それも、他に付き合っている人がいてその人のお腹に子供がいて・・・・・・・お父さんはお母さんを世界で一番愛しているのは知っています。世界一ではないですね、お父さんにとってお母さんは自分の心の一つだと思っていると僕は信じています。」
スンスクは祖父スチャンに似て穏やかで、賑やかな祖母や母と姉や幼い兄弟の様子をいつも静かに見ている男の子。
決して自分から発言する子供でもなく、父も母も沢山の子供の中で一番信頼している子供だった。
「お帰り、スンスク。」
「ただいま。」
スンスクは、帰宅を笑顔で迎える笑顔の母の顔を見ていた。
「どうしたの?」
「お母さんはお父さんに愛されているから、いつまでも若くていいですね。」
スンスクの思いもしない言葉に、ハニは持っていた布巾を床に落とした。
「ヤダ・・・・この子は。親をからかったらダメでしょ。若くないわよ、もうすぐ46歳になるし孫がいるおばあちゃんなんだから。おやつを用意するから着替えていらっしゃい。」
お母さんは本当にお父さんに愛されているし、愛してる事が子供の僕にもよく判る。
二階に上がってスンスクの部屋に行くには、兄スンリの部屋の前を通らないといけない。
兄の部屋のドアが少し開いて部屋の中から声が聞こえた。
「来てるんだ、ソラ姉さん。」
スンリは、今医学部6年で大学を卒業したらソラと6月に結婚する事が決まっている。
部屋を通り過ぎる時に急に話声が聞こえなくなった兄の部屋をチラッと見ると、二人が抱き合ってキスをしていた。
スンスクは顔を赤くして、スンリの部屋から視線を逸らした。
ホン先生も本当ならあの人と結婚するんだった。
病気になって気落ちしているのに、何も知らないホン先生が可哀想だ。
スンスクは病室のベッドで泣いていたミラの事を思い出していた。
0コメント