スンスクの春恋(スンスク) 3
「よぉ、いいか?」
「兄さん・・・・いいよ、ちょうど勉強が終わったところだから。」
スンスクはさっき見た光景が頭から離れず、スンリの方を見る事が出来なかった。
「オレさ・・・・結婚したら別居するから、オレの部屋を使えよ。スンギと一緒の部屋だと勉強に集中できないだろ?」
兄妹が多く自分の部屋を持っているのはスンハとスンリだけ。
スンハは結婚をして家を出ているが仕事の関係で夜勤の時もあるから、病院まで近い実家から通う時に使うが、スンリはソラの両親と同居すると言う事だった。
「お前は兄弟の中で一番真面目だよな。物静かで穏やかで・・・・・・親父の頭脳をそのまま受け継いだのはお前だけど、外見は誰に似たんだろうな。」
「お母さんは僕はおじいさんに似ているって言っていました。」
「そっか・・・・・・でもさ、おじいちゃんの事を知っているのはオレとスンハだけでスンミもまだ赤ちゃんで知らないんだよな。」
兄さんは、僕がソラさんとあんな事をしているのを見たのを知っているのだろうか。
「大学は医学部に行くのか?お前ならオレよりも苦労しなくてもいい成績取るだろうな。天才ペク・スンジョを抜くのはスンスクだと教授が言ってたぞ。」
「僕は・・・・・医学部に行きません。医者にはむいていないので。」
「医者にならないのなら、何になるんだ?」
「教師になりたい。」
「教師か・・・・・・・お前ならむいてるかもな、穏やかだし思慮深くて信頼できる。テハン大で教師の資格をとるのは楽勝だな。」
「いえ・・・・・・・パランの社会科学部に行こうと思っています。」
「パランの社会科学部は、高校の7クラスから上がって来るやつばかりだぞ。まぁ、お袋も社会科学部に進んだけど、結婚してから看護学部に移ったからな。」
そう、スンスクはスンリと同じく母が初恋の相手で、今でもこの世で一番好きな女性でもある。
スンスクはそれとは別に母と似たミラと同じ道に進みたいと思った。
「邪魔したな。下にソラが持って来たお前の好きなケーキがあるから食べて来いよ。」
最近、父スンジョに似てきた兄をスンスクは何も言わず見送った。
誰にも言えない。
僕が何故教師になりたいと思ったのか。
恥ずかしくて言えないけど、ホン先生と同じように教師を目指したい。
僕はお父さんや姉さんと兄さんの様に、冷静な判断で人の生死に関わるには気が弱くて無理だ。
失敗したらどうしよう、何か間違いがあったらどうしようといつも思っていた。
優秀なお父さんや姉さんと兄さんの陰で守られていたから、僕は今まで何事も起こさずに来れたけど、医者になるとそういうわけにはいかない。
僕は勉強しか出来ないから、人にその勉強の楽しさを教えてあげたい。
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