スンスクの春恋(スンスク) 4
「スンスク、授業が終わったら職員室に来なさい。」
担任の先生から、5限目の授業が終わった時に、スンスクは声を掛けられた。
クラスの人たちは、物静かなスンスクが職員室に呼ばれた事に驚いて、賑やかだった教室がシーンと静まり返った。
「はい・・・・・・」
「おい、ペク・スンスク、模範生のお前が何かしたのか?」
「さぁ・・・・・・」
身に覚えはないが、先日の小テストのミスだろうか。
テストという物で生れて初めて満点じゃなかった。
100点以外はとった事がなかったスンスクにしたら、それしか担任に呼ばれる理由がなかった。
「失礼します。」
頭を丁寧に下げてスンスクは職員室に入った。
職員室にいた先生たちは、事情を知っていたのかスンスクが来たらそれぞれの机の上の書類から顔を上げないで、1クラスの先生の話に耳を傾けていた。
「スンスク、君は優秀な生徒だが何か心配事でもあるのか?」
「心配事・・・・・ですか?」
「君が小テストで99点を採ったのは初めてだろう?まぁそれでも一番だが、君らしくなくて先生は心配なんだ。君はお父上のペク教授に次ぐIQを持っているから、まさか小テストでこんな点を取るとは思えなくてな。」
「はぁ・・・・・・・」
先生、僕だってミスはしますよ。
神様じゃないのですから・・・・・・・
でも、心配事はありますよ。
教育自習できていたホン先生の事。
先生の明るくて温かな笑顔を取り戻したいですから。
「それと、これは一度ペク教授に相談をしないといけないな。」
担任の先生はお父さんの同級生だったらしい。
らしいと言うのは、お父さんはパラン高校時代の話をあまりしない。
聞けば『必要のない事だから』と言うだけ。
「君はペク教授やお姉さんのスンハさんやお兄さんのスンリさんと同じく医者にならないのか?」
「なりません。」
いつも物静かないスンスクが、きっぱりと言い切った。
「僕には医師という職業はむいていませんから。」
先生は『両親と相談して、もう一度志望校を決め直ししなさい』と言ったけど、僕の家は自分で考えて決める事になっている。
正確にはお父さんは子供たちの考えを尊重してくれるし、お母さんは中学に上がったばかりのスンギの事もあるし、まだ一番下の双子のスングとスアは小学生で、仕事もあるからあまり考えさせて負担にさせたくない。
「・・・・スンスク?・・・・ペク君・・・・・・どうしたの?」
僕は考え事をしていたみたいだった。
「あっ・・・すみません・・・先生、何か飲みますか?」
「ううん、今はいらないわ。どうかしたのスンスク君。」
ミラの華奢な手がスンスクのおでこに触れると、スンスクは顔を赤くした。
「まぁ・・どうしたの?急に顔が赤くなって・・・熱もあるよ。お父さんはこの病院に勤めていたって聞いたけど、呼んで貰おうか?」
「大丈夫です・・・・・何ともないですから。」
ミラの手を思いっきりスンスクははらうと、その白い腕はベッドの柵に当たった。
「先生、ごめんなさい。大丈夫ですか?」
スンスクがミラが擦っている箇所を見ると、薄っすらと赤くなっていた。
「大丈夫よ、気にしなくてもいいわ。ハハァーン、もしかしてスンスク君・・・・私の事が好きなの?初恋だったりしてぇー。」
「先生!僕は実習の時の生徒ですよ。からかわないでください。帰ります!」
ミラがスンスクに謝っているのがドア越しに聞こえたが、スンスクは振り返らずそのまま病院の出口に向かった。
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