スンスクの春恋(スンスク) 18

ペク家は花嫁を迎える準備が始まり、住宅改修などで慌ただしく人の出入りが激しくなって来た。

「オンマァ、沢山の人が来てるけど、どうしたの?」

「スンスクお兄ちゃんのお嫁さんが来る準備なの。」

スアとスングはソラが家族になる事を喜んでいたが、もう一人姉が出来る事をさらに喜んだ。

「お母さん、先生を迎えに病院に行きます。」

「行ってらっしゃい。スンスクがミラさんと家に来た時には、大方片付いているから部屋の中を見てもらってね。」

結婚が決まってから、スンスクが今まで見た事のない程生き生きとしている。

まだ高校生だが、あと数日で卒業する。

少しずつミラの荷物が運ばれ、ウンジョが結婚してミアが同居して長い時が過ぎ、スンハが嫁いでスンリが結婚の為にもうすぐ独立する。二人の兄弟が巣立って減る家族を埋めるように、新しい花嫁が来る。

スンジョに張り切り過ぎるなと言われていたが、初めてペク家の家長の妻として張り切らざる負えなかった。

スンスクはミラを迎えに行き、父が結婚の祝いにと買ってくれた車にミラを乗せた。

「スンスク君、ミラをよろしくお願いします。」

「はい。」

「お母さん、時々は帰ってくるね。幸せになるからね。」

病院で診察をして、そのままペク家の一員になるために、婚姻届を出してスンスクの妻になる。

ミラの体調もあり、結婚式の日取りは未定のまま。

それでも、高校の卒業式が済んだら家族だけで食事会をしてその時に指輪の交換をする事になっていた。

「緊張するなぁ・・・・先生を乗せて運転するなんて。」

「スンスク、あなたが頼りだからね。」

病気の進行が思った以上に早く、ミラはほとんどが車椅子に乗っての行動しかできなくなっていた。

病院の駐車スペースに車を停めて、後部座席から車椅子を降ろし、助手席に座っているミラを抱きかかえて移乗する。

周囲からすれば、新婚の夫婦の夫が甲斐甲斐しく妻を助けているように見えるだろう。

これが、生徒と教師だとは誰も気が付かない。

「ミラか?」

二人が病院の建物に向かっていると、生まれたばかりの赤ちゃんを抱いた一組の夫婦が声を掛けた。

ミラの元婚約者の男だ。

「教え子と結婚するだってな。なんだかんだと言って男がいないとお前は生きて行けない女だったんだな。」

ミラもスンスクもいい気分はしなかった。

「あなたの子供?」

「そうよ、私の方が彼を喜ばせる術を知っていたと言う事よ。その身体じゃ・・・・母親にもなれないわね。」

とても子供を世話ができるようには見えないその女は、長い爪に派手なマニュキアを施した手をしていた。

裏切られていた事にミラは悔しかったが、今はスンスクが傍にいるから、別れた婚約者の事に対して何の感情も湧かなかった。

「先生・・・・・・・まだあの人に未練があるのですか?」

心配そうにスンスクはミラの前に膝まずいて訊ねた。

「スンスク・・・・・・ちがうの。私・・・・・子供を生めるのかなって・・・・・スンスクと結婚が出来て夢は叶ったけど、もう一つの夢が叶えられるのかなって・・・・・・」

「子供は持ったらダメだって、先生のご両親が言っていたじゃないですか。」

「赤ちゃん・・・・欲しいな、スンスクと私の赤ちゃん。」

ミラは両親から病気の事を心配して、子供の事は考えないようにと言われていた。

「でも・・・・ご両親には反対されている。」

「いけないかな?早くて3年で長ければ5年・・・・・完治した人もいると聞いてる。何年もかかって完治したとしたら、30歳近くになっちゃう。もし、完治しなくても、子供がいたら元気がもらえるかもしれないし、私がこの世に生まれて、スンスクという優しくて素敵な旦那様と幸せに暮らした事実を残したいの・・・・・・・」

ミラの車椅子を押しながらスンスクは考え込んだ。

結婚してミラを支えて守ると決めた。

ミラが望むように子を持つという自信がスンスクにはまだない。

一日でも一分でも一秒でもミラには長く生きていて欲しい。

押している車椅子の方向を変えて、診察担当の先生にミラは子を持つ事が可能かを勇気を出して聞く事にした。

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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