あなたに逢いたくて 1
付き合うとか彼女だとか、そんな軽い感じではない。
彼女・・・彼女といると、どんな時も緩めた事の無い心の緊張が緩んでホッとしてくる。
彼女はオレにとって無くてはならない存在。
空気のような存在という言葉は平凡だけれど、オレがオレらしく生きて行くためには必要な大切な人だ。
彼女との最初の出逢いというか、存在を知ったのは高一の時だった。
何時も誰かに見られていた気がしていた。
その視線は何時も同じで、身体に感じると同じ人だと判っていた。
物陰からオレを見ていたその視線と合った時、恥ずかしそうにニンジンみたいに顔を赤くしていた。
いつもその視線を、感じていることは不思議と嫌ではなかった。
声も掛ける事が出来ない女の子のその視線を受けているのが楽しくて、いつかタイミングがあれば捕まえて見ようと思っていたけれど、捕まえる前に消えてしまい捕まえる事も話しかける事も出来なかった。
高三になったある時、その女の子から手紙を貰った。登校して開けた靴箱の中に可愛らしい封筒が入っていた。
靴と一緒というのは綺麗じゃないし少し嫌だった。
それよりも、手紙の内容も稚拙で誤字脱字のオンパレードで、一番イラついたのは女の子独特の象形文字のような字。
7組のオ・ハニ・・・・・
手紙の最後に書いてあった名前。
職員室前のラウンジを通った時、あの女の子がいた。何時も一緒の友達と。
独特の体型の一人の女が、オレの方を向いてしつこいほど名前を連呼した。
〈オ・ハニ〉と・・・・・
高一からいつも、物陰から見ていたあの女の子、手紙をくれたオ・ハニなんだ。
オレは、ハニとの出逢いを思い出し寝返りをうった。
オレのすぐ隣で静かな寝息をたてて眠るハニを見て笑みがこぼれた。
「お前とこんな関係になるなんて思わなかった。判っていたのはお袋だけだな。」
スンジョはハニのふっくらした唇を長い指でなぞり、細くて柔らかな栗色の髪を、すくって指に絡めた。
高校の卒業式後の謝恩会の時のイタズラなkissから、大学生になって付き合い始めて何度も触れたハニの柔らかくて甘い唇。
ハニは、自分の唇をなぞっているスンジョの指の感触で目を覚ました。
「おはよう・・・・スンジョ君・・・」
にっこりと笑ったハニの眠そうな目が笑い、囁くような声が聞こえた。
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