あなたに逢いたくて 2

スンジョが朝食を用意しているあいだ、ハニは身支度を調えベッドメイキングをした。こんがりとよく焼けたベーコンの香りが、空腹な朝の胃袋の食欲を誘った。
「いい匂い。」
スンジョが手際よく並べるのを見ながら、ハニはコーヒーの用意をしていた。
「ハニもよく動いて頑張ったからな。」
からかう様に、片方の口角をあげてイジワルク笑った。
「いじわる!」
時々、スンジョのマンションに泊まった朝は、まるで新婚の二人のようにラブラブな朝を過ごしていた。

「お袋には、何時に帰るって言ってある?」
「お昼頃には、戻りますって言ったけど。」
「まだ時間は十分あるし、もう一汗かいて、激しい運動をして来たようにするか?」
スンジョの言う激しい運動の意味に、最初は一瞬考えたが、その意味に直ぐ気がつき顔を赤くした。
「そんな・・・・」
「冗談だよ。でも、いつまでも今のままでいてはいけないから、親達にはきちんと結婚を考えている事を言わないといけないな。」
真面目な顔になったスンジョから、視線を外しながら小さな声で返事をした。
「うん・・・・・」

スンジョ君と、こんなに近くになれるなんて夢のよう・・・・・ううん、きっと夢かも。

暫くの沈黙のあと、スンジョはハニの淹れたコーヒーを飲み干して、食べ終えた食器を片付け始めた。
「おじさんに連絡してくれないか?先にハニのお父さんにオレから将来の事を話すから。」
スンジョは、ウォークインクローゼットに行き、ハニのお気に入りの淡いブルーのシャツを選んだ。

その淡いブルーのシャツは、スンジョがさらに爽やかで格好良く見えるからハニは好きだった。

スンジョの車の後部座席に置かれたままのピンクのラケットバックとスポーツバックが、テニス部の合宿に参加した証拠となっていた。
テニス部の強化合宿は、本当は今日までだが、選手ではないハニは、前日には合宿所を出て帰宅出来た。

スンジョは選手ではあるが、特別部員の為1日だけ軽く練習をしただけで帰って来た。

ハニの父ギドンの店<ソ・パルボクククス>は、二人が訪れた時間は昼のランチに向けて準備をしているところだった。

ハニが店のドアを開けると、テーブルを拭いていたジュングが顔を上げた。
「いらっしゃい!まだ準備・・・・・おお~ハニやないか!待っときぃ、今シェフを呼ぶから・・・・・シェフ!ハニが合宿から帰って来ました。」
ジュングは、ハニに続いて入って来たスンジョを威嚇するように見た。
「何しに来たんや、ぺク・スンジョ!」
「ジュング、スンジョ君は今日は客だ、お茶をお出ししなさい。」
ジュングはギドンの言い方に、スンジョとハニの間には、何かある気がした。

「話って何かな?」
ギドンは、スンジョと一緒に店に来たハニが緊張している様子を見てなんとなく父親としての感が働いた。
娘が、ずっとスンジョに好意を持っていたことは知っていた。
友人の息子のスンジョは、ギドン自身頼りがいがあり男として信頼していた。

それでも、自慢できる物が何もない娘に、その思いを諦めさせた方が良いと何度も思っていたことがある。
「おじさん・・・ハニ・・と結婚したいのですが、お許しを貰いに来ました。」
スンジョのその言葉にハニはびっくりして、その横顔を見つめた。
将来について考えているとは言っていたが、プロポーズをされたわけでもなく、なんとなく深いつながりになって続いていただけでも幸せなのに自分と結婚したいと本当に父に言ってくれたことを錯覚のように感じた。
「スンジョ君・・・・・」
スンジョは照れたように顔を少し赤らめてハニの方を見た。
「今すぐではありませんが、ハニが大学を卒業して僕が医学部を卒業し、医師として社会に出て兵役に行く前に結婚したいのです。」

ハニはスンジョの言葉に胸が詰まって涙が出て来た。
誰にも内緒で深いつながりになっていた。そんな付き合いをギドンは知らない。ハニは時々スンジョのマンションに泊まっていた時も、ミナたちの家に泊まってくるとずっと言っていったから。
「いつから付き合っていたんだ?それに・・・医学部って、スチャン・・君のお父さんは知っているのか?スチャンはスンジョ君が跡を継ぐとずっと思っているぞ。」
「父には今日の夜に話します。ハニとは大学一年の夏過ぎから付き合っていました。」
「二年も黙っていたのか?家を出たのはそのためか?」
唖然としているギドンの顔色を窺うようにハニはそっと父の顔を見た。

「パパ・・・・ごめんなさい。スンジョ君が好きなの・・・・・他の人は考えられないの・・・・・・」
ハニの真剣な眼差し。どちらかというと同年代の女の子よりも幼く見えていた娘が、最近急に大人びた感じになっていた事は気が付いていたが、まさか結婚を意識した相手が出来ていたことに驚いていた。
「スンジョ君・・・・ハニは何もできないやつだ、特別に美人じゃないし勉強だって料理だってできないし、おまけに人一倍そそっかしい。ただ自慢が出来ることは、努力することだ。それと明るい笑顔だ。その笑顔を一生輝かせてくれるか?」
「はい、一生ハニの笑顔を守ります。ハニはオレの一番愛した人ですから。」
ギドンは信頼する友人の息子で、何でもできる完璧な青年に、大切な娘を彼になら任せてもいいと思った。

これから先に起きることがスンジョとハニにとって辛い日々の始まりになるとは、まだ誰も知らない。



ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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