スンスクの春恋(スンスク) 59
_________ お腹の中の赤ちゃんが動いた・・・・・・・
授業中に届いたメールを、休憩になるとすぐに開いた。
病気は確実に進行している事は二人とも自覚している。
薬の投与を今は止めているのだから。
ミラの未来を考えて決めた事だが、口には出せないが不安は沢山ある。
まだ十代のうちに結婚してすぐにミラの妊娠。
周囲は学生生活を楽しく過ごしているが、自分は妻を持ち子供も生まれる。
別に早くに結婚した事は後悔していないが、ミラのお腹に宿った子供の成長を素直に喜べない。
お腹の中の子供が動いた・・・・・という事は、ミラの病気も進んでいる。
完治したと言う人の本を読んだ事もあるが、病気を受け入れて短い時間でも精一杯幸せになると決めた。
「た・・・ただいま・・・・ミラ・・・・・」
いつも静かに家に入ってくるスンスクが、騒々しく玄関に入りリビングのソファーにぶつかりながら寝室のドアを開けた。
「しーっ」
ミラに付き添っている母ハニが指を一本立てて、静かにとスンスクに合図を送った。
「ミラ、リハビリを頑張って疲れちゃったみたいで、今眠ったばかりなの。」
「赤ちゃんがお腹で動いたって・・・・・・」
「元気な赤ちゃんみたいよ。初めての胎動なのに、よく動いてたわ。」
スンスクは母が傍にいなかったら、掛け布団を剥いでミラのお腹に触れてみたかった。
「そ・・・そう・・・・授業を一つ欠席して帰って来ちゃった。」
「そうだろうと思ったわ。いつもならまだ帰る時間じゃない物ね。」
眠っているミラを起こさないように、ハニはスンスクと一緒にリビングに出た。
「はい、リハビリ記録」
母がこまめにノート書いているリハビリ記録は、もう5冊目に入った。
一日に3~5回、ミラの体調を見ては軽く腕を動かしたり足を動かしたりしている。
体温・血圧・食事量や内容が細かく書いてある。
「前よりもリハビリに苦労しているみたいだね。」
「お腹も大きくなって来たし、動くのも大変みたい。でも頑張っているわ・・・・・・私が途中で止めようと言っても、もう少し頑張りたいって・・・・・・・・」
「お母さんに似ていますね。」
「私に?」
「お父さんが言っていました。ミラはお母さんとよく似ているって。自分で決めた目標は無理だと言われたり、どんなに辛くてもやり遂げるって。」
「スンジョ君がそう言ったの?」
スンリと結婚したソラもそうだ。
ヘラとギョンスの娘でも、『ソラはお袋』と似ているとスンジョに言われた事がある。
「スンスクもそうだね。ミラと結婚がしたいって言った時、スンジョ君が反対したのに諦めなかったもの。スンハもスンリもみんな結婚したい相手と途中で迷う事があっても、最後まで諦めないで結婚したから・・・・・でも、私とは違うわね。」
「違いますか?」
「内緒よ。今まで子供の誰にも言った事がないから・・・・・・・・」
スンジョが二階の部屋にいるから、ハニは聞かれないように部屋から出てくる様子がない事を確信して、スンスクの耳元で小さな声で囁いた。
「お父さんもそうだよ、ツ~ンと素知らぬ顔をしていても意外とあきらめが悪いの・・・・・・・オレはお前以外を好きになれない・・・・・・・って」
ノロケのような言葉を母は自分で言って自分で恥ずかしがっていた。
「違うだろう!?」
スンジョがいないと思ってスンスクに言ったが、いつの間にか休憩をするために二階から降りて来ていた。
「キャッ!ごめんなさい。」
いつまでも恋人同士のような両親を見るのをスンスクは好きだった。
自分も両親のように、いつまでもミラと幸せに暮らして行けたらと願っている。
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