スンスクの春恋(スンスク) 61
「いい大人が病人と妊婦に手を挙げるのですか?」
「誰よ!この阿婆擦れをどうしようと自由でしょ!」
スンミは恐る恐る目を開けると、自分に襲い掛かっていた人の手を止めている父に気が付いた。
「アッパ・・・・・」
「アッパですって?」
「娘とうちの嫁に用があるようですが・・・暴力を振るっては落ち着いて話が出来ないと思いますが。」
「父親がいるのなら、それなら話がしやすいわ。」
怒鳴り込んで来た女性はスンミが手伝って教えているバレエ教室を経営している女性で、スンミを指導していた先生の妻だった。
頭に血が上ったその女性は一方的にまくしたてるように話し終わると、震えているスンミの方に顔を向けた。
「スンミ、お前の話を聞きたい。この人の話している事は本当か?」
「ゴメンなさい・・・ゴメンなさい・・・・・・・本当です。バレエ教室の先生と・・・・・・お付き合いしています・・・・・いけないと思っていたけど・・・・ずっと先生が好きで・・・・・」
バシッとスンミは先生の妻にまた頬を叩かれた。
「あなたみたいな人がうちの生徒だったと思うと、恥ずかしくて他の生徒さんや親御さんになんて言っていいのか。」
「すみませんが、一方的にうちの娘を責める前に、ご主人を交えて話が出来ませんか?」
この騒動に怯えているのはスンミだけではない。
突然の来客にお茶を用意しながら、震えているミラがいた。
どうしたんだろう・・・・・お腹が痛い・・・・・
_________ガシャーン
と、食器が割れる音がして、話をしていた三人は音の方を向いた。
「ミラ、どうした?」
「お義父さん・・・・・お腹が痛くて・・・・・」
スンジョは蹲っているミラに駆け寄ると、すぐにスンミに声を掛けた。
「病院に連絡して・・・・パク先生に伝言をしなさい。流産かも知れない。」
「流産?」
「出血している可能性がある。今からアッパが病院に連れて行くから、スンスクにも連絡だ。」
ミラを抱え上げるとスンジョは車の鍵を持って玄関に向かった。
「申し訳ありませんが、今日はお引き取りいただけますか?日にちを改めて、ご主人と一緒にいらしてください。こちらも娘と妻と私と今後の事を話しますので。」
痛みに耐えているミラをバックミラー越しに見守りながら、スンジョは病院に急いだ。
「ミラ、大丈夫だから頑張るんだ。スンスクにも連絡を入れたから、何も心配する事はない。」
うんうんと頷くミラだが、スンジョはスンリが生まれる前に亡くした子供を思い出していた。
あの時助ける事が出来なかった子供に、自分を追い込んだハニがどれだけ苦しんでいたのか知っているのはスンジョだけ。
ミラに同じ思いはさせたくない。
事の発端はスンスクの姉スンミの、人としてはしてはいけない事をしたから起きた騒動。
ミラの事が落ち着いたらハニと三人でしっかりと話してから、相手と会って今後を決めないといけない。
何も責任のないミラとスンスクに、親として申し訳なく思っていた。
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