スンスクの春恋(スンスク) 62
「スンジョ君・・・ミラは?赤ちゃんは?」
「点滴で落ち着いたよ。今はスンスクが傍に付いているから、オレ達は家に帰ってスンミと話をしよう。」
「スンミに何かあったの?家に帰ったら泣くだけで何も言ってくれないから。」
スンジョもはっきりと事情は分からないが、してはいけない事をスンミがしていた事を病院の廊下で話したくなかった。
「家に帰ってからスンミと話せばわかる。」
スンジョはミラが休んでいる病室の方を伺ってから、そのままハニを連れて帰宅した。
ベッドで休んでいるミラに付きそうスンスクは、自分でも情けなくなるほど涙が止まらなかった。
「スンスク?泣いているの?」
「ミラ・・・ごめん・・・・・僕が付いていてあげられなくて・・・・」
ミラはスンスクの言葉を違って取ってしまった。
「赤ちゃん・・・・・・・ダメだったの?」
その勘違いにスンスクはハンカチで自分の目から流れている涙を拭いた。
「赤ちゃんは大丈夫だったよ。ただ、このまましばらく入院した方がいいと、お父さんが言っていました。」
「良かった・・・・良かった・・・・・」
数日前に胎動を感じたばかり。
少しずつ母になる実感が強くなって来たミラは、この小さな命が自分が生きていると言う証で希望であった。
「スンミはどうしているんだろう。」
「ゴメンね、スンミの事でミラに心配かけて。付き合っている人の奥さんが怒鳴って来たって・・・・・・」
「怖かった・・・・でもね、スンミが可哀想だった。こういった事って、片方ばかりが悪いわけじゃないのに・・・それなのにスンミは何も言わなくてね・・・・・熱があって具合が悪かったのに・・・髪の毛を引っ張られて沢山叩かれて・・・・・・」
その時の状況を思い出して、スンミの事を心配しているミラの手をギュッと握った。
「お父さんが、その事はミラには関係なから気にしないようにって・・・お母さんが来たらそのまま家に帰ってスンミと話をするらしいよ。」
友人の様であったり、時には姉妹のように最近は仲良くしている二人。
スンスクからも話を聞いていたし、スンミ自身からも少しだけ話して貰っていたから、あの状況でのスンミが憐れに思えた。
「どうなるのかなぁ・・・・・スンミ。」
「うん・・・きっとお父さんが上手くまとめてくれるよ。でもきっと・・・・・スンミはどこかに行かされるかもしれない。お父さんは間違った事は嫌いだから。」
スンスクもまたスンミが心配だった。
自分がスンミの付き合っている人に気づいていたのに、何もしてあげられなかった事と、年が近くて仲が良かったのに相談にも乗ってあげられなかった事。
身体が弱くて、学校も休みがちで友達もいない寂しいスンミだから、きっとあの人を好きになったのだろうと思うと、もしこのまま会う事も出来なくなってしまたら、スンミはきっとベッドから起きられなくなる気がしていた。
その日のペク家ではスンミと両親が深夜遅くまで話し合っていた事を、あとからスンスク達は弟スンギから聞かされた。
泣いて謝るスンミに、無言の父とスンミの事を知ってただ泣いている母の声は、小学生のスングとスアも心配していた。
スンミはスンスクの心配した通り、付き合っていた人と会う事を両親に反対されて、大学も休学届を出して家にこもる事になった。
元々食が細かったスンミは、食事も喉が通らなくなりその後は精神面でも不安定になり、父スンジョの知り合いの地方の病院に入院をさせられた。
表面上、ペク家は落ち着きを取り戻して、スンスクとミラの二人の生活に変化が現れた。
「ただいまぁ・・・・・産休明けに、連日のお産で疲れたぁ・・・・・・・」
スンスクの姉スンハは夜勤明けの身体を休ませるために、インハの弟で二人目の子供を連れて実家に帰って来た。
「お帰り・・・ゴメンね、スンハ。今から病院に行くから、スングとスアが帰って来たらおやつを出してあげてね。」
「は・・・・い・・・ミラにおめでとうと言ってね。可愛い女の子が生まれて、おばあちゃんも喜んでいるだろうね。」
「喜んでいたわ。メールで生まれた事と、赤ちゃんの名前を教えたら、さすがにスンスクはセンスがいいって。」
スンスクとミラに待望の赤ちゃんが誕生した。
名前は【ミレ(未来)】
ミラが少しでも長く生まれた子供と一緒に未来に向かって過ごす時間を作れるようにと、スンスクが名前を考えた。
数日前に帝王切開で生まれたわが子と、ミラはまだ対面していない。
それでもペク家の人たちは、ミラのために明るく振る舞っていた。
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