スンスクの春恋(スンスク) 63
今日もミラは目を開けない。
パク先生もスンハ姉さんも、神経内科の先生も問題はないと言っていた。
でも、どうしたらミラは目を開けてくれるのだろう。
「ミラ、可愛い女の子だったよ。ミレ(未来)と名前を付けた。僕が子供を持とうと言わなかったら、ミラが目を開けなくなる事なんてなかった。ゴメン・・・・・・・・お願いだよ、目を開けて・・・・・・・」
スンスクは温かいミラの手を毎日擦っていた。
子供が生まれてから、大学の授業の合間に病室に来ては話しかけている。
面会時間が過ぎても帰らず、消灯時間までずっと付き添っていた。
____コンコン
「入るわよ。」
スンスクが振り向くと白衣を着たスンハが立っていた。
「姉さん・・・・・・」
「今はペク先生と行って欲しいな・・・・パク先生からの伝言よ。」
スンハはミラのベッドに近づき、脈を測った。
「赤ちゃんも保育器から出しても問題ないから、病室まで連れてくるわ。」
「本当に?」
「子供を連れて来ればミラの意識が戻るかもしれない。スンスクはオムツ交換の練習をして来たでしょ?」
「はい・・・・」
「なら心配ないね。赤ちゃんにミラのおっぱいも飲ませてあげたいし・・・・・スンスクが搾乳してくれるのならいいけど・・・」
「そ・・・それは・・・・・」
いくら結婚したと言っても、スンスクはまだ二十歳少し前。
さすがに奥さんの胸と言っても、恥ずかしくて触れる事どころかまともに見た事などなかった。
「頑張ってやってみなさい。ミラの力じゃ出来ないかもしれないし、赤ちゃんが餓死しちゃうわ。」
病気の進行で筋力も弱っているうえ、病院に入院してからは絶対安静でほとんどがベッド上での生活。
ミレを生む頃は介護用のスプーンしか使えなくなっていた。
「やってみます。」
「じゃ・・・まず赤ちゃんを連れて来るから待ってて。」
スンハと入れ替わりに看護師が病室に入って来て、ベビーベッドが用意された。
暫くすると、生まれて数日の娘が看護師に抱かれてミラのベッドの横に並べられたベビーベッドの中に寝かされると、ミレは小さな可愛い声で泣いた。
ぅぇ・・・・ぇ・・・ぇっ・・・・
その声が眠り続けているミラに聞こえたのか、目を静かに開けた。
「ミラ?起きたの?」
「スンスク・・・・・」
「生れたよ・・・・・」
スンスクはベビーベッドに寝かされていたミレを抱き上げて、ミラの顔の横に寝かせた。
「かわいい・・・・・・・スンスクに似ている・・・・・」
「そ・・そうかなぁ・・・・・ミラに似ているよ。」
張りつめた胸の痛みに、ミラは顔をしかめた。
「どうしたの?」
「胸が・・・・・痛い・・・・・・」
病室にいた看護師は、目を覚ましたミラの背中の方を静かにギャッジアップした。
「ミラさん、ご主人と一緒に赤ちゃんの授乳の練習をしましょうか?」
ミラもさっきスンスクが顔を赤くしたのと同じように顔を赤らめた。
仕方がないよね。
手もあまり長く上に上げていられないのだから。
ゆっくりと手を上げて、看護師の指示でスンスクとミラはマッサージを教えてもらった。
0コメント