スンスクの春恋(スンスク) 113
スンジョの名前を使って病院に入院をしたお蔭で、ミラの母ミニョンは個室に入れてもらう事が出来た。
昨日の夜の母の様子を思いだし、ミラは少し緊張をしてノックをした。
「はい・・・どうぞ・・・」
意外としっかりした母の声に、ホッとしてドアを開けた。
「お母さん・・・・」
「ミラ・・・来てくれたの?」
「うん、着替えも持って来たよ。具合はどう?」
「まだ熱は下がっていないけど、だいぶ楽になったわ。でも・・・ここは個室だけど・・・・」
「ミレのおじいちゃんが、何だかねこの病院に色々手配をしてくれたみたいで、入院費も大部屋と同じ金額でいいって・・・・」
ミレのおじいちゃんがこの病院でどれくらい有名な人だったのかは知らないけれど、パラン高校伝説の一人だと聞いただけで、自分とは違う世界の人だとは判っていた。
「ジオンさんに連絡をしないと・・・・一週間の入院だって、さっき看護師さんから聞いたけど、明後日には帰国してご両親の家に行かないで、うちに来てくれる事になっていたから。」
「携帯を持ってきたけど、渡しておくね。それとおじさんには連絡したよ。」
「そう・・・・ありがとう。」
具合がよくなったとはいえ、まだ本調子ではないミニョンには話せなかった。
ここに来る前に、ジフンに会った事は絶対に言えない。
誰にも頼らないで、どれだけ無理をしてシングルマザーとして苦労して自分を育てたのか。
ジオンと結婚をするつもりでいたのに、まだ何も知らない時にされた事で随分と傷付いた。
一人でひっそりとミラを産んで、隠れて生活をする事を決心していた。
今の家に来るまで、母と二人でジメジメとした暗い部屋で、話もしないで過ごした幼い頃。
まだ3歳の頃だったころに残っている記憶の中の光景。
今よりも母は痩せてやつれていて、顔を赤くして汗を掻いて笑っていたジオンの顔。
「やっと見つけた・・・・・」
ずっとジオンはミニョンを探していた。
あの時見たジオンの笑顔は、ミラの中では牢に閉じ込められた母と私を救ってくれた王子様に見えた。
「ジオンとは会えない・・・」
「どんな事になっても、僕にとってはミニョンが世界一の女性だよ。ミニョンが産んだ子供は僕の子供でもあるよ。」
あの時の言葉の意味は、まだ幼かった当時に理解する事は出来なかった。
「ミラ?夜は一人でいても怖くない?」
「怖くないよ、お母さんが仕事で明け方帰って来る事もあったし、朝になったら学校に行くから全然大丈夫。」
おじさんの家に行く事を知らないのなら、何も言わない方がいい。
明後日おじさんが帰国したら、きっとお母さんの所に来るはずだから、その前におじさんにあの人に家に行くように誘われた事を断った事を口止めをしておかないといけない。
おじさんならきっと判ってくれるはずだから。
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