言えない恋じゃないけれど(スア) 79
兄さんや姉さんの結婚式を、友人たちよりは兄弟が多い分沢山見て来た。
今までは一番下の双子として、特別な感情も無く、誓いの言葉を言っている姿を見て、ただ幸せでいて欲しいと思うだけだった。
それにオレの両親を見ていれば、よい手本があるから、同じようにしていれば普通に恋愛をして結婚して親になるのは当たり前だと思っていた。
スンハ姉さんやスンリ兄さんとは歳もかなり離れているから、あまり話をする機会は無かった。
オレが一時帰国をした二日前の日、智樹おじさんから預かった症例集をお父さんに持って行こうと、書斎に行った時だった。
いつもお父さんの傍にはお母さんがいるから、孫もいる年齢になっても新婚みたいだと思いながらノックをしようとした。
泣いているお母さんを優しく抱いているお父さんの目にも涙が滲んでいた。
始めてオレはお父さんの涙を見たような気がした。
「あの子供が生まれていたら・・・・・」
そう言って泣くお母さんに、お父さんは子供たちの前では聞かないくらいに優しい声だった。
「オレがハニを傷つけて、ヘラと結婚すると言ったから、時が経って忘れた頃に神様が天罰を下した。過去のオレの過ちを一生忘れないようにあの子の命を奪ったんだ。」
誰だ?あの子って・・・
オレ達兄弟の他にまだ子供がいたのか?
それにヘラって・・・・ソラさんのお母さん・・・だよな。
家に来るとお父さんと親しく話している姿を、お母さんはいつも悲しい顔で見ていた。
ただ拗ねているだけだと思っていたのは間違いか?
昔、何があったのだろうか、オレの両親とソラさんのお母さんと。
高三の時からククスのおじいちゃんと一緒に、この家に住んでいたと聞いた。
自然と恋人関係になって・・・結婚前に子供が出来て・・・・・流産したのか? お父さんが妊娠したお母さんを捨てて、ソラさんのお母さんと結婚することになって、それがショックで・・・・ オレはスア並みの勝手な思い込みのある男なのだろうか。
まさかお父さんが、そこら辺のいい加減な男なはずがない。
同性からも憧れられる存在だし、どちらかと言うと堅物でお母さん一筋。
お母さんがお父さんの事が大好きなように、お父さんはお母さんを愛している。
何があったのだろう。
「生れなかったあの子の代わりの子供なのに、スングとスアの命を私は消そうとした。」
お母さんのあの言葉にショックを受けた。
いつも子供のオレ達に合わせて、はしゃいだりしていたお母さんの知らない部分を知ってしまった。
呆然としていた時、誰かに背中を触られた。
スングが振り向くと、グミが声を出さないでと言うように、口に指を当てて自分の部屋の方にスングの手を引いて行った。
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