未来の光(スング) 41
お母さんの背中に抱き付いたのはいつ以来だろう。
スアとお母さんの背中を取り合って、権利を貰ったのはオレだった。
双子でも、いつも同じ時に病気をするとは限らなくて、あの時は確か幼稚園の時だったか。
解熱剤を飲んで元気になって、幼稚園で燥いだ日の夜に、また熱が上がって大変だった。
お父さんは出張でいなくて、おばあちゃんは撮影旅行で、兄さんや姉さんたちもいなくて、運転を禁止されているお母さんが、オレを背負って病院まで連れて行ってくれた。
スアはお母さんの服の裾をしっかりと握って、泣きながら付いて来ていた。
あの時のお母さんの背中は大きくて温かかったけど、さっき抱き付いた時に感じたお母さんの背中は小さかった。
それでも変わらず暖かで、甘い香りがした。
「どうした?まだ寝ないのか?」
「お父さんも、まだ寝ないのですか?」
「ん・・・・・お母さんが起きているのに寝れないだろう・・・・」
いつも一緒にいる両親は、本当に見ていてこちらも幸せになって来る。
「飲むか?」
「少し・・・・明日優花を迎えに行くので、残った状態で行きたくないですから。」
フッと笑うお父さんは、男のオレが見てもカッコいい。
「お父さんとお母さんは、大恋愛だったのですか?」
「いや・・・・・お母さんはお父さんをストーカーの様に追いかけていたけど、お父さんは嫌いだった。」
「でも・・・・・」
「でも、お母さんがドンドンとお父さんの心の中に入って来て、いつの間にか好きになって告白したよ。」
飲んでいたビールがのどで詰まって咽そうになった。
お父さんが照れ臭そうに笑って言った言葉が意外で、まるで中学生の少年のような顔をしていたから。
「告白したんですか?」
「ああ・・・・二人のおじいちゃんとおばあちゃんにウンジョおじさんの前で、ハニと結婚がしたい。この先一緒にいたいのはハニ以外考えられないって・・・・・・・」
「いきなり・・・・・・プロポーズは?」
「してないよ。お母さんに言わなくても、お父さんがお母さんと結婚がしたいと言っても断るはずがないと思っていたから。」
「確かに・・・・・・」
本当はもっと聞きたいことがある。
ソラ義姉さんのお母さんと何があったのか。
スンリ兄さんが、昔調べていたことがあると言っていたけど教えてくれないし、スンスク兄さんもスンミ姉さんも勿論スンハ姉さんも教えてくれない。
聞かない方がいい。
その言葉だけだ。
仲の良い今の両親を見ていれば、知らなくてもいい事なのかもしれない。
「お父さん、片付けるのでお母さんと眠ってください。」
「そうか?じゃあ、後は頼むよ。」
お母さんが寝室に入るのを見ていたお父さんを引き留めるのは悪いし、気が効かない息子だとは思われたくない。
寝室の入り口で、お父さんを待って嬉しそうに笑うお母さんの笑顔は、少女の様でオレが見ても可愛いと思うし、そんなお母さんをお父さんが背中に手を添えて部屋の扉を閉めるのを見て、オレも優花と結婚したら、両親の様に仲の良い夫婦になるよ。
キエさんとの事は、今は優花との結婚を許して貰えたら、もう何とも思わなくなった。
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