未来の光(スング) 40
眠れない。 嬉しいと言うのでもないけれど、一日の間に沢山のことがあったからなのだろう。
優花を連れて帰国して、両親と兄弟に初対面させた。
歓迎されている中での優花との結婚を前提とした付き合いを家族全員に話した。
優花の両親から出た結婚の条件を、自分の家族に話した途端空気は変わった。
我が家は、家族全員お仲がいいのが有名だけど、あの場面でお母さんがあんな風な事を言うとも思わなかった。
「何か飲もうかな・・・・・」
深夜過ぎても寝付けないから、酒でも少し飲んでみようかと思いついた。
もう寝静まっている家の中のはずが、スアの部屋で物音がしていることにスングは気が付いた。
結婚をして別の所で生活をしているし、妊娠をしているから実家まで急に夜中に帰って来ることは無いはずだ。
一階でスンスク家族が休んでいるし、門塀は高くてセキュリティ会社に何かあればすぐに通報されるから、不審者の侵入はあり得ない。
ガサガサと何かをしている音が聞こえるのは間違いない。
静かにスアの部屋のドアを開けると、ハニがベッドメイキングをしていた。
「お母さん、夜中に何をしているの?」
いきなり声を掛けられて驚いたハニは、飛び上がった瞬間に足をベッドのどこかにぶつけて尻餅を付いた。
「いったぁ・・・・・・・」
「お母さん、ごめんなさい脅かしてしまって。」
ぶつけた所を擦っているが、かなり痛そうな顔をしていた。
「夜中にスアのベッドメイキングをしてどうしたの?」
「優花さんが来て眠れるように、シーツを換えていたの。」
別にこんな夜中にしなくてもシーツ交換なんてそんなに時間はかからないのに。
「寝ないとお父さんが寂しがるよ。」
「まっ!変な事を考えないでよ、お父さんなら下で飲んでるわ。」
知らない間にお母さんの髪に白いのが増えている。
両親が他の友達よりも年が上で、兄妹が多い事をからかわれた事もあったけど、オレは不思議と嫌な思いをした事が無かったし、この家族が大好きだ。
「お母さん、大好きだよ。」
立ち上がってシーツ交換を始めた母の背中にスングは抱き付いた。
いつも小さな時からこうしたかったが、兄妹たちが子供を連れて来ると忙しそうでずっと我慢をしていた。
「どうしたの?スングがそうするとお父さんと間違えそうよ。」
「間違えないでしょう。何十年もずっと一緒にいるのだから。下で少し飲んで来るよお父さんと。」
キスしたいくらいにお母さんが好きだけど、お父さんに見つかったら恐ろしくて出来ないよ。
大好き・・・・・・お母さんの事は世界で二番目に愛しているよ。
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