思わぬ同居人 29
「何か一つでもないの?自慢出来る事とかは・・・・・」
「ないです・・・・・」
「何でもいいのよ・・例えば家族が多国籍とか・・・・・」
何だよ、7クラスの進路指導は・・・・オ・ハニか。
確かにお前は多国籍だ。
「おおスンジョ君、受験勉強は捗っているかね?」
「することもありませんので、好きな作家の本を読んでいます。」
「君ならどこでも確実だから、健康管理だけは・・・・ああこれも言うこともないかな?」
ムシが好かない。
勉強なんて大学に行かなくたって、どこでもできるし、どんな大学だって構わないだろうが、教頭先生はテハン大に行って欲しいのだろう。
「自習室には行かないのか?」
「ああ、ちょっと用があるから。」
「いいよなぁ、お前は塾に行く必要もないし・・・・・・」
いつまでも話に付き合うつもりはなかったから、適当に答えてオレは約束された店に向かった。
家ではお袋がまた余計なことを言うだろうし、ハニが聞いていたらまた大袈裟に人に言い触れ回るだろうから、こんなファストフード店の方がマシだ。
「君が当大学に来てもらえれば、どの学部に関わらず卒業まで授業料を免除します。大学を終了した後は大学院に進んでもらえれば勿論こちらは嬉しいです。その後講師になって最終的には教授・・・の席を用意していますので。」
色々な大学から鬱陶しいくらいの誘いを受ける。
大学に行く意味さえも分からないのに、どこの大学に行っても変わらない。
毎日ひっきりなしに訪れる大学関係者。 どこの大学の話を聞いても、ピンとくるものがない。
「即答は出来ないでしょうから、ご両親と相談してまたいい返事を待ってますよ。」
「はい・・・・・」
家に帰ればお袋とハニの気楽でバカみたいな話が、別世界のように感じるけど、何だろう・・・
この二人の姿を見ている方がいいと思う。
___キャー
「お兄ちゃん、バカハニが何か叫んでいるよ。うるさくて読書に集中できないよ・・・・・」
ハニの叫び声が聞こえると、すぐに聞こえてくるお袋の足音。
「ハニちゃんどうしたの?」
ウンジョやオレが叫んだってそんなに早く二階に駆け上がって来ないだろう。
その迷惑な同居人に一大事が起きたと言って上がって来たのだろう。
もっとも、ウンジョもオレも叫んだりしないけどな。
「お兄ちゃん何とかしてあげて、ハニちゃんが大変なの。」
「何だよ、読書中だ。」
「そんなのどうでもいいわ。願書が消えちゃったって・・・」
「フゥ~ン」
「フゥ~ンじゃないわ。早く来ないのなら、本は没収よ。」
「おい!やめろよ。」
と言ってもやめるお袋じゃない。
仕方がないから行ってやるか。
ハニはネット出願の願書の送信ボタンを押したつもりが、どこかに消えてしまったと言って泣いていた。
「今日が締切なのに・・・・・・・・・」
「ギリギリでやるからだよ。それに重すぎだろう、どれだけソフトを入れているんだよ。」
「私じゃないもぉ・・・・・あ~~~~どうしよう。」
「うるさい!!静かにしろよ。」
願書を探すのは大して難しくない。
見つけ出して、送信ボタンを押して完了。
「ありがとう」
ハニがよく言うこの言葉は、オレはあまり言ったことがない。
この言葉が聞きたくて、ハニが困っていると手を貸したくなる。
知らない間にハニと二人っきりだ。
お袋はオレとハニがこうしていることで何か期待をしているのだろう。
ここの所、ハニと二人っきりでいることで、自分の気持ちが表現できるようになって来た。
「お前さ・・・勉強が嫌いなのに、どうして大学に行くんだ?」
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