思わぬ同居人 28
特別自習室の中は、目標としている難関大学合格のために、みんな必死になって勉強をしていた。
スンジョはいつもと変わらず、テキストや参考書を広げるわけでもなく、お気に入りの作家の小説を読んでいた。
「スンジョはテハン大だろ?」
「まだ決めていない。」
「おい、まだ決めていないって・・・まっ、お前ならテハンは楽勝だけどな。」
そう言って話しかけて来た隣の生徒は、また机に広げられているテキストに視線を戻した。
目標・・・か・・
この部屋でただ読みかけの小説を読むのなら、残って勉強をしている必要もない。
スンジョはカバンに本を入れて、まだ終了のベルが鳴る前に特別自習室を出た。
途中退席は厳禁だが、監督している教頭はスンジョに何も注意をしたりはしない。
きっと親父はオレを自分の母校のテハン大に行かせたいのだろう。
人から見れば、オレは恵まれた環境らしいから、親の希望通りに進学するのが当たり前だと言われる。
のんきに鼻歌を歌いながら風呂に入っているアイツは、進路のことをどう考えているのだろうか。
「あ~サッパリした。」
全く色気がない。
「おい!」
「あっ!スンジョ君・・・お風呂どうぞ。」
「違うだろう。」
「何が?」
「お前は居候なんだから、先に使ってごめんなさいだろう。」
「おばさんが私に先に入りなさいって・・・・・今日はお風呂から上がったら顔をマッサージしてくれるの。」
「どうでもいいけど・・・ボタン掛け違えて、扁平胸が隙間から見えるぞ。」
慌てふためいて胸元を見るアイツが、オレにからかわれたことに気が付いて、ドスンドスンと足音を立てて、下に降りて行った。
気楽な奴だな。
この時期は追い込みで勉強が大変なのに、お袋に顔のマッサージをしてもらう?
アイツはお袋のいいおもちゃだ。
玩具メーカー夫人のお気に入りの玩具(おもちゃ)は親父の会社でも作っていないからな。
スンジョはハニから遅れて下に降りると、グミとハニがまるで母と娘のように楽しそうに話をしているのを黙って聞いていた。
「スンジョ君はテハン大に行くのかなぁ・・・・・・」
「受かればね。おじさんもテハン大で経営学を学んだし、いずれ会社を継ぐのなら同じ大学に進学してほしいって以前から思っていたから。」
「スンジョ君なら楽勝ですよ。」
「そう?ハニちゃんはどうするの?」
「私は成績があまり良くないから・・・・運が良ければパラン大に行ければいいのだけれど・・」
グミは急に思いついたように、ハニの肩をガシッと掴んで楽しそうに話した。
「もしダメだったら、スンジョと結婚しちゃいなさいよ。」
「おばさん・・・・・・」
またお袋は勝手なことを言って・・・・オレの進路が自由にならないのは判っているけど、この時勢に親の言いなりで結婚するかよ。
「私はあなたくらいの時におじさんと結婚することを決めたのよ。」
「おいお袋、それは仕方がないだろう?結婚しないといけない事情が出来たのだから。」
「結婚しないといけない事情・・・・?何かあったのですか?」
「うふっ・・・うふふ・・・・・・お兄ちゃん言ってもいいかしら?」
「勝手にすればいいだろう!オレが出来たから結婚したって。」
どうでもいいけど、オレにだって相手を決める権利はある!
何が良くてこんな頭の悪いバカな女と結婚しないといけないんだよ。
スンジョは、キッチンで水を一気に飲んで、ニヤついているハニを一睨みして二階に上がって行った。
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