思わぬ同居人 27
「ねぇ・・・この人カッコいいでしょ?」
ハニは5人グループの一人を指差した。
何だよコイツ、オレの事が好きだと言っときながらこんなチャラそうなアイドルが好きなのか?
「別に・・」
「カッコいいよぉ。」
涎を垂らしそうに口のしまりのない顔はみっともない。
「お前はオレが好きなんじゃなかったんだ。」
_____プッ!・・・・
吹き出して笑ったハニの唾がオレの腕に飛んだ。
「汚ないなぁ。」
と言うと、ハニはカバンの中からガキっぽいハンカチを取り出して拭いてくれた。
不思議だ。
嫌じゃなかった。
人の唾が飛んだり、親しくもない人のハンカチで拭かれるのが以前は嫌だったが、ハニが触れた部分が温かくてそこからなんだかほんわかする感覚が伝わって来た。
「好きだよ。スンジョ君がこの世で一番好きだよ。でもね・・・このリーダー・・・スンジョ君の顔に似ているでしょ?ちょっと人を寄せ付けない感じ。」
「フン・・・そんなの興味ないよ。この世で一番好きなのがオレでもいいが、おじさんは好きじゃないのか?」
『あっ!』と言って、口元を手で覆う馬鹿なハニ。
そんなことは判っている。
早くにお母さんを亡くして、父一人子一人でここまで来たのだから、オレの様に両親揃って育った人間と親子間の感情は違う。
?
どうしたと言うんだ、このオレが人のことに付いて思うなんて。
「ねぇ・・・・のど乾かない?」
「乾かない。」
オレはそう言ってカバンから本屋に来る前に買ったペットボトルを出して、ハニに見せつけるようにゴクゴクと一気に飲んだ。
「ちぇっ!全部飲んじゃったの?少しは残してくれると思ったのに・・・・・・」
ニヤッとオレは笑ってペットボトルをハニの目の前で振ってみた。
「ほんの少しは残っているけど・・・・いいのか?オレと間接キスだぞ。」
真っ赤な顔をして首を横に振るハニを見て、スンジョは心が軽くなる気持ちがした。
「ファストフード店ならいいぞ。」
「付き合ってくれるの?」
それには応えず、スンジョはハニの先を歩いて行った。
バタバタと走って来るハニの足音を聞くと、自然と口元が緩んでいることに自分でも気が付いていた。
嫌じゃなかった。
人と合わせるのが苦手なのに、ハニに合わせることが楽しいと思う。
「何を飲むんだよ。」
「おごってくれるの?」
嬉しそうに目を輝かせるハニに、オレは表情を見せないで返事を待った。
「苺シェイク!Lサイズで!」
「太るぞ。」
「いいの!受験勉強できっと痩せるから。」
その甘い考えにピッタリの甘い苺シェイク。
「コーヒーを・・・・砂糖とミルクはいりません。」
オレを席で待っているハニは、嬉しそうに顔を輝かせていた。
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