思わぬ同居人 51

「ペク・スンジョ?」

 理工学部の教室の席に座っていると、聞き慣れない声で声を掛けられた。 

「ユン・ヘラ?」

 「光栄ね、私の名前を知っていてくれて。」 

「知らない人はいないだろう?オレが首席入学で君が次席入学。昨年の高校女子テニス大会の準優勝。」

 ヘラがオレに声をかけた途端、話し込んでいた学生たちが一斉にこちらに視線を向けた。 

オレは人に注目を浴びる事は苦手だが、このヘラはオレとは違って注目を浴びたいらしい 。


「天才ペク・スンジョが、テハン大じゃなくてパラン大に行ったって、巷では不思議に思われているわよ。どうしてパランにしたの?」

 「さあ・・・・君もどうしてテハンじゃなくてパランにしたんだ?」

 「さぁ・・・・フフフ・・・あなたと同じ理由だと思うわ。」

 オレと同じ理由だって? 名前だけは知っていても、相手の考えている事が判るはずがないだろう。

 ヘラはオレの横に、まるでそこが自分の指定席のように腰掛けた。 


「ワン・ギョンス先輩から、テニス部に来ないかと誘われているのだけど、あなたが入るのなら入部してもいいのだけど。」 

ギョンス先輩に掴まったのか。

 あの人はしつこいからな、今はオレの所には来ていないけど,近いうちに誘いに来るだろう。 

「オレは入らない。人に合せないで自分で決めればいいんじゃないか?」

 「そうね・・・同学年だと私と対戦できる人はいないし・・・あなたも同じよね。」 

そんな話をしていると、理工学部の教室に教授と授業を担当する先生方が入って来た。

 他の人たちのように、目的があって入ったこの学部ではないが、大学生活の間にオレが求めている夢が見つける事が出来るのだろうか。 

どうしてパランにしたのかと人に聞かれて、まさかこのオレが自分探しの為にテハン大に行かないでパランにしたのだと言っても信じる人はいないだろう。


ハニのように簡単に自分探しが出来ればいいが、オレにはきっとその自分探しをして見つける事が出来るのかは・・・難しいのかもしれない。 

アイツの言う自分探しと言うのと、オレの言う自分探しは違うのだから。 


廊下から誰かがチラチラとスンジョの方を見ていた。 

その視線が誰なのか、スンジョはそちらを見なくても直ぐに判る。 

「おい、スンジョ・・・・アレ・・・」 

1クラスではないが、パラン高校から来たヤツは、ハニとオレの関係をよく知っているから教えてくれたのだろう。 

「悪いな・・・」

 ハニがちょろちょろと教室を覗いているが、いつまでもそのままにしておく事は出来ない。

 サッサと教室を出て、適当にハニと話しをして家に帰った方が、この先大学生活も変な注目を浴びる事はないだろう。

 アイツはそんなオレの気持ちも知らないで高校時代と変わらず付きまとって、大学でも噂が広まるのだけは止めて欲しい物だ。 


「アンニョン!」 

「何しに来たんだよ。」

 「どんな所で勉強をするのかなって思って・・・」

 イタズラにキスをしただけなのに、すでに恋人気取りか?

 「で・・・どうだった?」

 「変わんなかった。」 

あたり前だ。

 理工学部だからって、特別な作りになっているわけではない。 

きっとハニの頭の中には、科学実験なんかをする研究施設でもあるのだと思っているのだろう。 


「あら?彼女?」 

オレがハニと話しているのに気が付いたのか、ヘラが間に割り込むように入って来た。

 「まさか!」 

オレがそうだとでもいうのを期待していたのか、ハニがガッカリとした顔をすると、ユン・ヘラはハナで笑うようにハニを見下してオレの腕に手を触れて誘って来た。

 「ラウンジでお茶でもしない?」 

「しない・・・じゃ・・」

 オレが誘いを断るのを見たハニが喜ぶ様子が背中を向けていても判った。 


ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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