思わぬ同居人 52

大学生になった実感。

 ハニならきっとこんな風に思っているのだろう。

 『1限から7限までの授業が無くて、自分が履修する授業だけでいいなんて、高校より勉強時間が無くてよかった。』

 オレも良かったと思うよ。

 休みのたびに、1クラスの教室付近をうろうろとして、ストーカーの如く貼り付いていたハニが、オレの受ける授業にまさか来る事など無いだろう。

 そう高をくくっていた。

 お袋がこっそりとオレの部屋に入り、提出用の履修希望用紙を見つけたとは気が付かなかった。 


「お前・・・・・」

 「偶然ね、スンジョ君がこの英語の授業を取るとは思ってもいなかった。」

 「無謀ね・・・あなたくらいのレベルの人がついていける授業じゃないわよ。」

 ヘラがハニを小馬鹿にして言うが、ハニはやる気を起こせば思いもよらない力を発揮するヤツだ。

 でもまぁ、この授業を取るのは無謀なのは確かだ。

 このクラスは、帰国子女やネイティブに英語が話せる学生の為の授業だ。 

ハニのアルファベットがやっとの奴には、ヘラが言うようにとてもついていける授業ではない。 


案の定、講師の説明に応える学生を決める時、ヘラがハニを推薦して名前を好ばれると、オレに助けを求めるが、お前がこの授業を取ったのだからお前が悪い。 

少しは真面目な気持ちで、履修科目の選択をして欲しいよ。

 それにしても、このユン・ヘラは噂通りの人だと知ったこの瞬間。 

オレと同じように、親しい友達がいないと言うのではなくて、友達が出来ない理由がよく判った瞬間でもあった。 


指名されて答えられなかったハニは初回授業から行き詰ってしまったが、家に帰ってから遅くまで英語の勉強をしていたのをスンジョは知っていた。

 幼少から高校までアメリカで過ごしていたヘラに比べたら、ハニにはとてもあの授業が理解できるはずがない。

 ほんの少し開いた部屋のドアから中を伺って、暫くその姿を見ていたスンジョは、ドアを思い切ってノックしてみた。 


「入っていいか?」

 「教えてくれるの?」 

「だれが教えるか!高校と違って、自分が選んで取った授業だろう。それもお袋から聞いて、社会科学部と共通の授業を探して見つけたのだろう。」

 「知っていたの?」

 「当たり前だ。お袋とお前の行動は、手のひらで転がすように分かっているんだよ。」 

一生懸命に書き取ったのだろうが、スペルが少しどころかほとんど違っている。

 ハニを知ってからオレは今までした事のない勉強をし、まさか大学生になって授業で先生が言った言葉やボードに書いた事を一つも残らず書き写したのも初めてだ。


 「ほら、これを貸してやるよ。間違ったスペルをチェックしておけよ。それとこれ・・・・ウンジョが使っていたのだけど、中学3年程度の物だ。」

 「ありがとう!」

 簡単にありがとうと言うハニは、最近はその言葉を聞いてみたいと思う様になっていた。 

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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