思わぬ同居人 130
ハニの白い肌が、ウエディングドレスによく映えた。
白い頬を薄桃色に染めて、白桃のように甘い香りが漂って来そうだ。
一歩二歩と近づいてくるハニは、まるで夢の中に現れた妖精のように儚げで、それでいてその輝きは朝陽に輝く露の様に煌めいて・・・・・・
「スンジョ君・・・」
小さく囁くハニの声に、夢の中ではないこの次元に存在する大切な人がスンジョの目を見ていた。
ギドンがハニの手をスンジョに渡すと、手袋から伝わる手が僅かに震えていた。
「ハニをよろしく。」
「お義父さん、大切にします。」
ハニを大切に育ててきたギドンの目は潤んでいた。
父と娘が二人で築いてきた幸せな時間を、今度は自分が築いて行く新しい生活。
人前結婚式を選んだ二人は、参列者の方を向いて宣言書を一緒に持つと、それぞれ左手を上げた。 「私ペク・スンジョは夫として妻オ・ハニを慈しみ、病める時も、富める時も、貧しい時もこれを愛し敬い慰め互いに助け合い、命ある限り真心を尽くすことを誓います。」
あたり前で簡単なようでとても難しい言葉が誓いの言葉だ。
厳粛な空気が流れるこの瞬間、ただ願っていた事はただ一つの事だけだった。
「それでは指輪の交換を・・・・」
ハニの細い手首を支えるようにスンジョはハニの左の薬指にマリッジリングをはめた。
それに続いてハニがスンジョの指にはめようとして、緊張しながらスンジョの手を持った時・・・・・
「おい・・・おい・・・・結婚指輪ってどっちにはめるのだった?」
「左の薬指だけど?」
「このオレの手は右手で、ハニがはめようとしている指は人差し指だと思うけど・・・・ 」
「あ・・・・・」
ハニの後ろでミナとジュリが心配そうに見ていた。
スンジョの不安と、ミナとジュリの心配が現実になった。
間違えてスンジョの右手の人差し指にはめようとしていた指輪は、左の薬指にはめ直そうとしていたが、手元が狂ってカラ~ンと音を立てて大理石の床に落ちて転がった。
「まぁ、どうしましょう・・・・・」
グミとスチャンが指輪の転がる先を見て、スチャンの足元で止まるとそれを拾い上げてハニに手渡した。
「ハニちゃん、大丈夫よ、落ち付いてね。」
「は・・・はい・・・」
気を取り直して、今度は間違いなくスンジョの左の薬指に指輪をはめる事が出来た。
やっと指輪の交換が終わると、会場内は参列者の拍手で湧き上がった。
その音に声が消えそうでも近くのハニにだけで聞こえる声で、結婚して初めての意地悪な言葉を囁いた。
「バ~カ・・」
意地悪くスンジョがそう言うと、ハニはニヤリといたずらっ子のような笑みを浮かべた。
「素直じゃないんだから。私の事、本当はずっと前から好きだったくせに。」
「な・・・・」
不意を突いてハニがスンジョの頬を両手で挟むと、花婿がするはずだった誓いのキスを花嫁のハニがして来た。
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