思わぬ同居人 142
拗ねたハニは厄介だ。
甘い言葉で囁いても機嫌を直さないし・・・・と言うよりも、オレは甘い言葉など囁けない。
「ハニ・・・話をしないか?」
ドアノブに手を掛けるが、中から鍵を掛けて顔を見て話そうと思っても話す事も出来ない。
スンジョは自分らしくない行動を取って、ハニに部屋の中に入れてもらう事にした。
ただ、今までしたことも無い行動で、ハニがドアを開けるかどうかは判らない。
ハニの行動が最近は予測できないし、自分の演技がどこまでハニに伝わるのか判らない。
「う~、寒いな・・・・・ハ二を探して外に出ていたから、風邪を引いたかもしれない。ちょっと熱っぽいな・・・ 家に帰ったら、研修や医師となって患者を診察するようになったら、その都度ハニと喧嘩をして家に入れて貰えない日が多いと、オレはそのうちに肺炎で最愛の妻を残して逝くことになるのか・・・・・」
ドアの方に歩いてくる音が聞こえると、スンジョはニヤリと笑った。
「ハニはオレと結婚をしたら、オレが死んでも悲しくないのか・・・・・新婚旅行での思い出を胸に抱いて死ぬにしても、喧嘩だけの思い出は・・・・・辛いな・・・」
一応鼻をすすって泣いている振りをしていると、小さくカチャリと音がしてドアが静かに開いた。
その隙に、スンジョはドアを押さえるようにして開けて、ハニが背中を向けない様に腕を掴んだ。
「だましたの?」
「だました・・って、聞きづてない・・本心を言ったのだけどな。ミナ達と初めての夜の話をしていたのに、喧嘩をして何も思い出なく帰るのか?オレはハニにこんなに早く嫌われるとは思わなかった・・・・・・」
さすがにハニもいつまでも拗ねたままで、スンジョの顔を見ないでいる事を続けていられない。
スンジョに嫌われることが一番ハニにとって辛い事だと判っているから、スンジョはそう言ってみただけだ。
「嫌っていないよ・・・嫌っていないから。」
両腕をスンジョに掴まれていたハニは、必死な顔でスンジョを見上げた。
「判っているよ。ハニはオレ以外を好きになれないし、オレを嫌いになれない事も忘れたりする事が出来ない事も。」
「私・・・あの女の人嫌い・・・スンジョ君に近づくから嫌いなのじゃなくて、自分も結婚しているのに人の旦那さんを誘惑するから。」
「オレも嫌いだよ。オレにはハニしかいないから、例え誰かに誘惑されたとしても、その人の方には行かない。新婚旅行に来て、お前に冷たい言葉を言って悪かった。」
「ううん・・・私もわがままを言ってごめんなさい。スンジョ君の奥さんとして、満足に出来ないかもしれないけど、いい奥さんになるように努力するから。」
ハニも寒いのか、手の指先が冷たくなっていた。
遅い時間ではあるが、冷えた身体を温める為にバスタブに湯を張って、二人並んで湯の中で足を温めた。
「さて、これからどうしようか・・・・・」
「ど・・・どうしようかって・・・・・」
スンジョは立ち上がるとハニを抱き上げた。
「えっ・・・・な・・・・」
「もう寝るぞ・・・」
「ちょ・・・ちょっと・・・あの・・・」
驚いてはいたが拒むこともしないハニは、顔を赤くしてスンジョの首に腕を巻きつけるようにして身体を預けた。
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