声を出して 6

余計な事を言うなよ


いつもよりも元気に家を出ようとしたハニの腕を引いた時のスンジョの言葉。

 スンジョ君の家に同居してから耳元で囁かれた二度目の言葉に、私は本当は声を出してこう言いたかった。 

「う~ん、くすぐったい♡」 

耳に掛る息でブルッとして、笑ってスンジョ君を見た時のスンジョ君の顔は、いつになく・・・・いつもよりも用心深かったような気がした。

 そう、グミはスンジョとハニの二人を細かい仕草までチェックしているのだから、スンジョが耳元で囁いた時はグミが座っている所から何か話しているか見えない様な角度にしていた。

 「スンジョ君・・・よ・・・」

 言いかけた時に、鞄の中の携帯が振動した。 

「メール?ミナかな?」

 携帯の画面に表示されているのはスンジョの名前だった。 


玄関を出て行くスンジョは、すでに携帯は上着のポケットの中。 

メールを打つスピードも天才的だとハニは感心しながら、スンジョからのメールにドキドキと期待を込めて開けた。  


___ お袋の動きに気を付けろ


何の事だろう? 

おばさんはいつも通り、元気で活動的で、特にいつも以上に嬉しそうなのに。 


____ おばさん、いつも以上に元気で楽しそうだよ

 ____ だから気を付けろと言っている。オレ達の会話ひとつにも、耳が集中している。話したい事はメールでしろ 


「こんな事、何もメールで言わなくても口で言えば速いのに。」 

ブツブツと言うハニの言葉にも、グミは聞き耳を立てているのか、直ぐに話に入って来た。

 「ハニちゃん、どうかしたの?メールに気を取られていてもいいけど、お兄ちゃんが車のエンジンを掛けたわよ。」 

「あ!はぁ~い・・」

 ハニはスンジョの言うとおり、グミの行動に今まで以上に気を付けなければいけない事が、判るようで判らなかった。 


「お待たせ・・・・ねぇ、車の中にふたりっきりでも、会話はメール?」 

「お袋のする事だから、用心には越したことはないが、一応今朝は盗聴器は付いていなかった。」 

「盗聴器?」

 「大袈裟だけど、あの人ならやりかねない。今朝も陽が昇る前に家を一度出て行ったからな。」 

たしかに、グミが朝早く家を出て行く時は、学校の掲示板にいつも何かしらハニとスンジョのことを書いた張り紙が掲示されていた。 


「と言う事は・・・・スンジョ君がプロポーズをした事を、掲示板にまた貼っていると・・言う事?」 

「それは昨日もう貼ってあった・・・・オレのベッドでお前は学校を休んで寝ていただろう。それに関することかもしれない。」

 何もなかったとはいえ、今まで針の孔くらいの事でもクレーターくらいに大きくして言う事が何度もあった。 


「ほら、着いたぞ。」

 シートベルトをはずしながら、スンジョは考え事をしているハニに声を掛けて車を降りると、ハニは急いでシートベルトをはずして車を降りた。 

スンジョの後ろを付いて歩きながら掲示板を見ると、そこには誰も立っていなかった。

 「良かったね。」

 「まぁな・・・でも、家ではメールで会話をしても、それを読んだらすぐに削除しておけよ。」 

「う・・・うん・・・・」 

おばさんが言う事は間違っていないけど、スンジョ君は自分の領域に入り込むことを嫌がるから。

 今ほど、ハニはペク家の母と息子の関係が、普通の親子関係と違う事におかしいと思うよりも、面白いと思った。 



ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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