声を出して 10
大学を卒業したら結婚するのなら、部活でヘラと顔を合せて嫌味を言われて嫌な思いをするくらいなら、スンジョ君のいないテニス部なんて行く意味もないから、ちょっとおサボりをして女磨きをした方がいいかも。
ハニは授業の合間に大学内のパソコンルームに行き、結婚までにしなければいけない事を調べる事にした。
「やっぱりこれだよね・・・・料理教室。日頃からおばさんのお手伝いをしているけど、私の腕前をスンジョ君はよく判っているから、多分期待はしていないと思うけど・・・・やっぱり愛妻の手料理は食べたいよね。情けない事に、料理人の娘なのに絶望的な腕前だから。エステ・・・・今から通ったらお金が掛ってしまうし・・それよりも、私は自慢じゃないけど色白餅肌が人よりも自信がある・・・・」
静かなパソコンルームで聞こえるは、キーを叩く音とハニの大きな独り言。
他の学生たちは、ハニの独り言を気にしないようにはしているが、一応この部屋は図書館と同じく『私語厳禁』と大きくポスターが貼られていた。
「すみませんが、さっきから声が大きいのですけど・・・・」
コンピュータールームの係員が、あまり大きく言うハニの独り言に我慢しきれなくなり、注意をしに来たのだった。
係員は貼られているポスターを指で指した。
「すみません・・・・・静かにします・・・」
「お願いしますよ・・・」
ハニの席から遠ざかると、ペロッと舌を出して肩をすくめた。
ネット検索をした料理教室やエステなどの住所をスマホに控え、急いでハニはパソコンルームを出て行こうとした。
出て行く時も、あちこち椅子や机を蹴飛ばして転びそうになりながら、結局は独り言よりも大きな音を立てて出て行った。
余程ハニの独り言がうるさかったのか、ハニがいなくなったパソコンルームは急にひっそりとして来た。
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