声を出して 11
「すみません・・・授業の見学をしたいのですけど・・・いいですか?」
「いいですよ。こちらの用紙に、見学される方のお名前と連絡先と結婚の予定が決まっていましたらお書きください。」
ちょっと無謀かと思ったけど、やっぱり覚えるのなら洋風の料理だよね。
おばさんが作るのは、洋風で韓国の家庭料理というものでもないし、家庭料理ならパパに教えてもらえばいいから。
ハニは見学申し込み用紙に必要事項を記入すると、見学者用のエプロンを受け取った。
緊張しながら、教室ごとに書かれているメニューを見て見学をする部屋を決めた。
自他ともに認める料理音痴のハニは、初級の前の入門編のクラスをまず見る事にした。
味覚はプロ並みの能力があるのだから、料理だってちゃんと先生に付いて習えば、その力は発揮すると思うのはハニだけではなかった。
入門編は、一応料理が全くできない人のクラス。
食材の保存方法、切り方・料理用語等、中学生の調理実習を思い出させる内容。
これくらいは、判るわ。
何て言ったって≪ソ・パルボクククス≫を経営している父を持つ娘だから。
少しだけ授業を聞いて、いよいよ初級クラスの中に入った。
初級クラスは、簡単な一品料理。
入門クラスから初級クラスはそれほど差はないと思っていたが、予想に反してけっこう本格的な物を作るように見えた。
ハニは、傍にいる講師の助手に授業の内容について聞いてみる事にした。
「あの・・入門編から初級クラスは、行き成り難しいような・・・・」
「そうですか?でも、自分たちで考えて作る創作料理ではなく、こちらで用意した食材と調味料に調理器具で、レシピ通りに作れば大丈夫です。」
レシピ通りに作って、家の中を煤まみれにした実績もあるし、生煮えの里芋や硬くて食べられない豆のサラダに、何度気を付けながら作っていても、いつどんな段階で卵の殻が入ったのか判らない卵巻き。
「大丈夫ですよ。みなさん最初は焦がしたり生煮えだったりしていますが、お式までには何品かは作る事が出来るようになりますよ。」
講師助手の人当り良さそうな笑顔に、ハニはつられて思い切って父に相談をして通う事になればいいと思った。
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