声を出して 32

「ヤンさんはいないのかなぁ?」 

「ヤンさんは畑作業をしていると思うよ。せっかく来たのだから会って行きたいが、店を出た時間が遅いから、また今度にしよう。パパは明日は店があるし、ハニもスンジョ君も学校だろ?」

 「明日は振休だから、遅くなるならヤンさんの所に泊めてもらってもいいかなぁ?」

 無意識にハニは泊まって行くことを口にしたが、ギドンが驚いた顔をしている事で、スンジョと二人だけで泊まると思ったのだと後で気が付いた。 


自分が言った事をスンジョがどう思っているのか知りたくて、チラッと顔を盗み見るが全く表情から考えている事が判らなかった。

 相変わらず何を考えているのか、どう思っているのかさっぱりと判らない。

 小さい頃のハニがどんな子供だったのか、と今まで一度も口に出して聞いたことも無かったし、ハニが何を考えているのかもまるで気がない振りなのか気がないのか、何も話さないスンジョに不安になったことは何度もあった。 


「ボラ、じゃあ行くから・・代金はここに置いて行くよ。」 

「あっ・・いいのに・・ゴメンなさいね、お話が出来なくて・・」

 「いや、遅くなったら二人を泊めてくれるか?」

 「判ったわ、父さんと母さんが畑から帰ったら伝えておくね!スンジョさん、ごめんなさいね、こんな田舎だけど、来てくれる人が多くて・・・」 

「いえ・・・お邪魔しました。」 

店の外は、畑仕事を終えた人たちや、通りすがりの人が駐車スペースを探して列をなしていた。 


「いい人ですね。」 

「いい娘だよ。大学に入って妊娠したって聞いた時、ヤンさんは期待していた娘がまさか・・・と思ってショックだったみたいだ。無学の親だから、子供には大学に行って一流企業に就職をして欲しかったって。まぁ、子供も一人の人間だから、親の言うとおりに育つことを期待したいけど、ハニも≪ソ・パルボクククス≫の後継者にしたかったけど、望みはゼロだからな・・・」

 料理人の娘が料理が出来なくては、跡継ぎにはなれない。

 義父が早くに亡くなり、義母がギドンの妻を育てながら店を営み、娘婿のギドンに跡を継いでもらった。

 ハニも母親と同じく料理が全く出来なく、自分の代で店を閉める事になると寂しさもあった。 


 「ボラの店から家内の墓まで歩いて行かなくてはいけなくて、勉強が忙しくて疲れているのに申し訳ないね。」

 「いえ・・・景色もいいし、それほど気にはなりませんよ。」 

秋の気配で木々の葉の色が変わり、近づく結婚式が現実だと教えているようだった。 


「ママのお墓に行くの・・・・」

 「今頃気が付いたのか、お前は・・・本当に困った娘だ。」 

「ゴメンなさい・・・・」

 一際小高い所にあるのが、ハニの母親のお墓だった。

 残して逝く幼い娘がよく見える所にお墓を作って欲しいと言う妻の願いだった。

 「スンジョ君が、ハニのお母さんのお墓に挨拶をしていないからと、今日の朝来たんだ。ハニのお母さんとおばあさんにお許しを貰っていないのに、結婚式の日が近づいて来たのに気が重かったらしい。」 

スンジョの思ってもいなかった気持を知って、ハニは胸が締め付けられるほど嬉しかった。 

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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