最後の雨 27
自分に廻された腕をスンジョはそっと外した。
休日でも学校に行く日でも、いつもと同じ時間に目が覚めるスンジョ。
ハニは、そんなスンジョとは正反対に、目覚ましをいくつもセットしても起きることが出来ない。
いつも通り自然と目が覚めたが、今日の目覚めはいいものではなかった。
昨晩自分の取った幼稚な態度で、ハニの足に火傷を負わせた。
布団を上げて、そっと火傷を負っている方のハニの足を見ると、まだ赤くなっていた。
新しいガーゼに少し多めに薬を乗せて、患部に貼ると痛みを感じたのかハニが目を覚ました。
「あっ・・・・スンジョ君、おはよう。」
昨晩のことを忘れているのか、まるで何事もなかったかのように、スンジョに笑いかけて挨拶をするハニの顔をまともに見ることが出来ない。
「起こしたか・・・・・・・」
「平気・・・・・もう起きる時間だし・・・・。スンジョ君ガーゼを貼り換えてくれたんだ。」
「・・・・・ぁあ・・・・もう一日薬を塗れば明日には赤味も取れている。昼にもう一度塗るから迎えに行く。どこの教室だ?」
「大丈夫・・・・迎えに来なくてもいいから・・・・・・」
ハニは看護学科にスンジョが来てもらうことは避けたかった。
結婚していることを内緒にしているからと言う事と、スンジョと結婚していることを知られたくなかった。
人気のあるスンジョと結婚していることが、看護学科で分かってしまうとスンジョファンの女子たちの、スンジョとは違って何も出来ない自分への態度を考えるとそれが怖かった。
途中編入をして来たから、早く仲良くなりたいからと言う思いもあった。
「看護学科に行ってはいけない理由があるのか?」
「そう言う理由(わけ)じゃないけど・・・・・・・」
昨日見た看護学科の連中と楽しそうに歩いているハニと、背の高い一人の男が気になった。
「夫のオレが妻のお前の教室に行っても何の問題もないだろう。」
冷たい少し怒った言い方をしたスンジョから、ハニは少し怯えた顔で見ていた。
「あの・・・・・私・・・・・結婚しているって・・・みんなに言ってない・・・・・・・」
「ふぅ~ん、言っても何の問題もないだろう。」
「ないけど・・・・・・・言い出しにくくって・・・・スンジョ君は看護学科でも人気があるから。だから・・・・」
「だから?だからなんだよ。」
ちょっと怒鳴るような言い方になったからか、ハニの目に涙が滲んだ。
「結婚していない振り・・・・・・・いいや・・・別に・・・・・。それなら薬をちゃんと塗るんだぞ。」
「うん・・・・・。」
ハニの手に薬と未使用の滅菌ガーゼとテープを渡してスンジョは部屋を出た。
これ以上ハニと話をしていると、言わなくてもいいことを言ってしまいそうだった。
さっきは本当はこう言うつもりだった。
結婚していない振りをして、他の女子と一緒に男子学生と仲良くしたいのか?
ハニはオレ以外好きになれないことは判っているが、誰とでも分け隔てなく接することが出来る性格だ。
その性格が、意外と男子学生から結婚してもハニの知らない所で話しているのをスンジョは聞いたことがある。
ギテ先輩やジュングにはそんな風に思ったこともなかったが、あの看護学科の男だけは何故か無償に嫌な感じがした。
ギテ先輩には先輩だからハニは遠慮しているところがあったし、ジュングが付きまとっていてもただの高校のクラスメートとしてしか見ていなかった。
だけどアイツは、看護学科のアイツはハニよりも年下なのに、まるでハニを見下して自分の言うとおりになると思っている。
「気に入らないな・・・アイツは・・・・」
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