スンジョの戸惑い 19
真っ赤な顔をして教室を飛び出したハニの後姿を、追いかける事もしないでただスンジョは見ていた。
「サイテー。」
何が最低だ。
本当の事を言っただけだろう。
スンジョにしてみれば、ハニが小さい胸がコンプレックスだったことなど知らなかった。
自分自身コンプレックスなど持っていなかったかったし、そんな事を思ったことも無かったから。
何時もならどこからか自分を見ているハニの視線を感じていたが、ハニを怒らせてからはその視線を感じることは無かった。
下駄箱で靴を履きかえて下校しようとした時、ハニが誰かと話をしている声が聞こえた。
「なぁ、ハニやぁ~住んでるところ教えてくれやぁ~」
「ゴメン・・・・・今度・・・ね?」
「今度、今度っていつやねん。前みたいに送って行きたいんやぁ~。」
「本当に・・・・・・・居候だから、今度そこの家の人に聞いてみるから・・・・じゃあ・・・・」
ふ~ん、ハニに纏わりついている物好きな奴がいるんだ。
ハニから少し遅れて、スンジョは校門を出た。
先に駅に来ているはずのハニが、ホームでもその姿を見つけることが出来なかった。
「早い電車にでも乗ったのか?」
ホームで会うだろうと思っていたハニは、駅の改札にもホームにもいなかった。
「ただいま。」
「あら?お兄ちゃん。ハニちゃんと一緒じゃなかったの?」
「まだ帰って来ていないのか?オレより早い電車に乗ったはずだけど。」
「そうなの?心配だわ。最近このあたりに痴漢が出るみたいなの・・・・・・あまり遅くならないうちに帰って来てくれるといいのだけれど。」
グミに言われても、その時のスンジョは特に何かあったのではと思うこともなかった。
「お兄ちゃん、夕食が出来たけど・・・・・・ハニちゃんまだ帰らないの・・・・・」
部屋から出て来た時にグミから言われて時計を見ると、学校を出てから2時間以上も経っていた。
どんなにユックリ帰っても1時間もかからない。
昼間学校でハニを怒らせた事は気になっていたが、それよりもグミが言った<痴漢が出る>という話が気になった。
「ねえ、お兄ちゃん。駅まで見に行ってくれないかしら。」
駅から迷子になる所はないとは言っても、外はかなり暗くなっていた。
「帰る家が無いのだからそのうちに帰ってくるだろう。お袋、食事を・・・・・・」
スンジョが席に着きおかずを食べようとした時、グミはおかずの乗った皿をサッと引いた。
「随分と冷たいのね。」
「冷たいのは、昔から変わらない。食べさせてくれよ。」
「ダメ!ママはそんなに薄情な子に育てた覚えはないわ。ウンジョ、あなたは食べていいわよ。」
子供じみた母の態度に呆れながら、リビングのソファーに座り新聞を読み始めた。
だけど読んでいる所は進まず、自分の何か判らない不安を感じて、スンジョは家を飛び出した。
グミは怒っている振りをして背中を向けていたが、そんなスンジョの様子を見て、クスッと笑った。
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