スンジョの戸惑い 20
ハニが学校から、なだ帰って来ないって?
オレの言った、あの一言がそんなにいけなかったのか?
いや、それよりお袋が言っていた痴漢の方が心配だ。
駅から家までは昼間もあまり通る人がいないが、夕方が過ぎると殆ど人通りも車の通りもないと言っていいくらいにヒッソリとしている。
死角になるところは・・・幾つかあるが、どこだ?
駅に行くまで、ハニと出会わなかった。
時間を潰しているコンビニで、アイスクリームを買った。
何でだ?オレはアイスクリームなんて食べないだろ。
オマケに、アイツの好きそうなストロベリー味を買って。
最後にスンジョが見つけた死角。
高台の公園にある植え込み。
その一帯は、高級住宅街の中でも特に豪邸が並んでいて、チョッとの悲鳴でもハニの明るい大きな声でも聞こえない。
ハニが通った時に見つからない様に、車の間に立って待っていた。
知っている中で一番、痴漢が出やすい場所だ。
ガサガサと、枝が動いて誰か人のような影が見えた。
夏なのにトレンチコートを着て、髪の毛がボサボサとしている、いかにも怪しげで嫌な感字で、痴漢の模範みたいな恰好をしている。
獲物を見つけたように歩いて行くその人物の行く先に、ハニがそんな状況だとも知らずに歩いていた。
行く手を塞ぐように立ち塞ぐと、ハニと向かい合って何か言っている。
「待って・・・・・・数を数えるから・・・・・大丈夫、見てあげるわ。」
何をいっているんだ、バカ!!
「1・・・・・・2・・・・・・・・3・・・・・」
男がトレンチコートの前を開ける少し前に追いつき、スンジョはハニの目を塞いでクルッと自分の方に身体の向きを変えた。
間一髪・・・・・
変質者のとんでもない恰好など、ハニに見せたくなかった。
ただ必死に走って、ハニに追いついたけど。
その変質者がしようとしている事に従うなんて、ハニは本当にバカだ。
トレンチコートの男の間抜けな姿は、オレと目が合うと更に間抜けな顔になって走って逃げて行った。
無かった事にして逃がすわけにはいかず、ハニをその場に残したまま追いかけた。
「おい!」
オレがそいつの肩を掴むと、必死に懇願しながら震えていた。
「初めてで・・・・・・家には幼い子供と病弱な妻が・・・・・・」
よくこう言った男が使うようなセリフ。
そんなことはどうでもよかったが、もうこの男はこんなことはしないだろうと思ってオレはそいつを逃がした。
ハニに何も被害が無かったから。
ハニの元に戻るとハニがオレを待って立っていた。
「迎えに来てくれたんだ。」
誰が・・・・・・オレはコンビニの袋を上げるとハニは袋の中を覗いた。
好きなアイスクリームを見つけると、すかさずオレに聞いて来た。
「食べていいオレが返事をする前に、美味しそうにアイスクリームを食べ始めた。
ハニのアイスクリームを食べている時の顔を見て、痴漢のあんなものを見る事がなくて本当に良かった。
あのトレンチの男は自分を見せるだけだったのだろうが、万が一それだけでは無かったらと思うとブルッと身体が震えた。
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