スンジョの戸惑い 21
スンジョは濡れた髪を拭きながら、ハニの部屋のドアをノックした。
「風呂、空いたぞ!」
いつもなら直ぐに返事が返って来るのに、今日は夕食が終わって後片付けをグミと一緒にした後、部屋に入ったまま出て来なかった。
スンジョは静かにドアを開けた。
ベッドの上で雑誌を拡げたまま下を向いて動かない。
寝てるのか?
スンジョはハニのベッドまで近づいてしゃがみ込み、ハニの顔を覗きこんだ。
静かな寝息が、少し開いた口からスースーと聞こえて来る。
可愛い顔して・・・・・・・
可愛い?
確かにハニは可愛い顔をしている。
でも、オレのタイプじゃない。
オレは、無防備に眠るようなそんな・・・・・
いや・・何を考えているんだ。
ハニに特別な感情でもあるというのか?
違うとは言い切れない。
帰りが遅いからと心配して迎えに行き、痴漢から間一髪の所で守って、安心したのは確かだ。
人を疑うことの知らないハニ・・・・・
オレの周りにいる人間は、人を蹴落として伸し上る事ばかり考えている。
「う・・・・・・・う・・んんん・・・・・・」
ハニが薄らの目が開いたと思ったら、びっくりしたように飛び上がった。
「ス・・・・・ス・・・・・な・・・・・な・・・何?」
「風呂だ・・・・」
ハニにそう言ってベッドから離れようとした時、柔らかな手がスンジョの腕を掴んだ。
「ありがとう・・・・・・・」
人から「ありがとうな」ど言われたことなど無かった。
ハニの少し寝ぼけた眠そうな声が、心の奥に響いた。
「お前が隙だらけだから、変質者に出くわすんだ。」
何故だろうか、怖い思いをしたのに、こんなに冷たい言い方をするつもりなんてないのに。
背中にハニの視線を感じながら部屋のドアを閉めた。
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