スンジョの戸惑い 22
テスト前の授業は、自習と言われてもスンジョは何もすることはなかった。
テスト前に慌てて勉強しているヤツを見ていると、金を払って学校に来ているのにバカじゃないかと思う。
いつものあの教室は、無断侵入をしている人がいると言う噂が広まって、頑丈に鍵が掛けられ使えなくなっていた。
どうも、オレたち以外の人間が入って、何か風紀上よくない事をしていたと言う事らしい。
高校生として不健全な現場を、見廻りの教師に見つかったようだ。
不健全・・・・
あの時のオレとハニがあまりにも近づいていた時のような雰囲気ならば、そうなるのも可笑しくないが、それ以上の事をしていたのだから仕方がない。
オレ・・・オレも確かに、二人だけしかいない教室だと言う事と、隠れて使っていたと言うドキドキ感で一瞬気が緩みそうになったこともあった。
あの教室には、誰も来ないことを判っているから。
多分この間、先生と一緒に来たアイツだろう。
退屈な自習時間に、校庭の体育の授業をスンジョは眺めていた。
1組とは違って元気のある体育の授業。
その中でひときわ賑やかな一塊のグループの方に目が向いた。
ピョンピョンとウサギのように飛び跳ねて、時々キャーキャーと声を上げて笑っている。
「ハニ・・・・・。」
思わず声が漏れてしまった。
手で誤魔化すように口を塞ぐと隣の席のイ・ミスンが不思議そうに聞いて来た。
「どうかしたのか?さっきから校庭を見て笑っているけど・・・・・?」
「いや?気にしないで・・・・・・」
イ・ミスンはまた机の上の教科書の方に顔を向けて勉強を始めた。
息苦しい程の笑いもない教室から抜け出したくて一冊の本を持って席を立った。
「ペク・スンジョどうかしたのか?」
「息抜きがしたいので、校庭で勉強してきます。」
「判らないことはな・・・・・いな・・・・・・・・君ならいいだろう。」
先生はオレに何も言わない。
先生よりもオレの方が知識量が多いから、質問が無いことくらい判っているのだろう。
校庭で体育の授業をしている様子が見える少し小高い所にあるベンチから、体育の授業をしているハニの姿を追っていた。
オレといる時は、俯いて時々モジモジとしているハニが、滴がポトリと葉の上に落ちて跳ねたように元気だった。
見ていて不思議と自分までも元気が貰えるようで、常に緊張感のある生活をしていたオレの心の中がホッと温かく感じた。
何だろう、この感覚。
トックントックンと心臓が脈打つ感覚にスンジョは戸惑っていた。
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