スンジョの戸惑い 23
全くハニの口はよく動くな。
喋ったり・笑ったり・拗ねたり・食べたり・・・・・・・
表情豊かな顔は見ていても商いが、ハニは笑った顔が一番可愛い。
可愛い?
オレは思考回路が変わったのか?特別に美人でも可愛い顔でもないハニが可愛いなんて。
オレが好きな人間は、頭が良くて気が利いて、人の心の中にむやみに入り込まない人間だ。
昼間の体育の授業を見てから、オレの思考回路がずれて来ている。
水を得た魚というのはあんな風なんだろうな。
今、目の前で食事をしているハニは、大きな口を開けて食べ物を放り込んで・・・・
食べている時の幸せそうな顔を見ていると、飽きる事がないほど面白い。
オレが見ているのに気付いたのか、間抜けな顔をして口をポカンと開けてオレを見ている。
ポロンと箸に挟んだ食べ物が、涎が落ちるのと同時にテーブルの上に落ちた。
「バーカ」
思わず、口に出して言葉にして言ってみた。
アングリと口を開けるハニは、今にもまた垂れそうな涎をずっと飲み込んだ。
「まぁ~なんて事を・・・」
自分の子供より、ハニが可愛いお袋。
次に来る言葉が判るから、その場を逃げるように椅子から立ち上がった。
少し幼稚だと思ったが、ハニをからかっている自分が楽しかった。
部屋に戻ったオレはまさかお袋とハニが何やら企んでいたことなど知らずに自分の部屋で、読み掛けの本を読んでいた。
お袋は実の子供のオレやウンジョよりも、ハニといる時の方が楽しそうで元気だった。
まあ、それはそれでいいんじゃないかと思っていた。
隣のハニの部屋からお袋とハニの楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
「お兄ちゃん、最近ママは僕の事あまりかまってくれない。」
ハニが来てから、ウンジョが寂しそうにしているのは知っていた。
「寂しいなら、ウンジョも行って来ていいぞ。」
スンジョがあまりにも冷たい言い方だったためか、ウンジョは隣の部屋で談笑しているハニたちが気になったが、大好きな兄から離れることが出来なかった。
「ハニちゃんは今も可愛いけど、小さいころはもっと可愛かったのね。そうそう・・・あの写真・・・どこにいったかしら・・・・・ああ・・これ見て。」
グミは一枚の写真をアルバムから取り外した。
「なんかスンジョ君に似ていますね。でも・・・スンジョ君って妹いませんよね。」
グミは意味あり気に含み笑いをした。
「誰だと思う?フフフ・・・・スンジョよ。私ね、女の子が欲しかったの。スンジョはお腹にいる時あまり動かなくって、誰もが女の子だと言っていたの。でも・・・産まれたら男の子で、産まれて来る子のために用意した服はみんな女の子の物で、捨てるのも惜しいしスンジョは女の子みたいな顔をしていたから・・・・・・・女の子のふりをさせていたの。」
グミがスンジョの幼稚園の頃の話を思い出しながらハニに話していた。
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