スンジョの戸惑い 25
ヘラヘラと笑いながら夕食を食べているハニの顔に無性に腹が立ってきた。
「あら!お兄ちゃん、今日は食が進まないみたいね。体調でも悪いの?」
「別に・・・・」
むかついて食事がのどを通らないだけだ。
「ご馳走様でした。」
「あら・・・ハニちゃんデザートは?」
「あ・・・・」
スンジョはハニより先に立ち上がり、ハニの方を一瞬だけ睨んだ。
「ハニの部屋にデザートを持って来てくれ。」
グミの目が嬉しそうに輝いた事は、スンジョもハニも気が付かなかった。
「早く二階に来いよ。勉強するんだろ?」
ハニがピョンピョンと飛び跳ねるようにオレの後を付いて来るのが判る。
お袋がハニに「頑張ってね」と、嬉しそうに声を掛けているのが聞こえた。
オレと同じ学校なのだからと同じ教科書のはずなのに、見慣れない雑誌のようにいたずら書きが施されていた。
おまけにいたるところに、色々なペンで書かれたいたずら書きのハートやら星やら・・・・
ハートで囲まれたオレの名前まで書いてある。
オレがそれに気づいたからかハニは、ハズカシそうにそれを隠した。
「教科書に落書きなんかするから勉強が出来ないんだ。」
「だって・・・・勉強解んないんだもの。一時間の授業がすごく長くて眠らないようにするにはこうするしか・・・・・」
ハニの言い訳が可愛かった。
何を聞いても判らないと言って、一週間教えて自分の精神力がもつのかと思ったが、それでも、オレが一つづつ教えていくと、一生懸命に考えていた姿がもっと可愛くて・・・・
本当に何も解っていなくて教えるのが大変だけど。
本当に簡単な基礎問題でも、出来ると嬉しそうに声を挙げて喜んでいた。
ハニの笑顔は本当に可愛い。
こんなに単純な事で喜んで、純粋な笑顔は見たことがないし、オレには真似が出来そうにない。
一生懸命に問題を解いていると思っていたハニが、持っていたペンを落として急に机に突っ伏した。
よほど疲れたのか苦手なのか、数学に取り掛かってすぐに眠ってしまっていた。
ハニのふっくらした良く動く口から涎が出ている事が妙に気になって。
寝息を確認する不利をして、静かにスンジョは顔を近づけた。
静か一瞬だけ触れたハニの唇は、思った以上に柔らかく温かかった。
初めて触れる女の子の唇は、周りの音が聞こえない夢の中にいるようなそんな感覚になった。
なぜか解らない、心の奥の扉がゆっくりと開いているのが判る。
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