スンジョの戸惑い 27
「今日からテストなの?」
「はい そうです。」
「ハニちゃんなら大丈夫、きっと出来るから。」
お袋は簡単に言っているけれど、オレがどんなに大変な思いをして勉強を見ていたのか知らないだろう。
この一週間、ハニの勉強に付き合っていたから毎日寝不足だ。
いつも9時には眠りについていたのに、日付が変わったころにようやく眠るなんて自分の人生で初めての事だ。
昨日も、ハニがオレの作った問題を解いている間、待ちくたびれて机に伏して眠ってしまった。
ハニのバカは、オレの寝ている顔を見ていてつられて眠ったのだろう。
オレの目が覚めた時に涎を垂らして爆睡していた。
「おい、行くぞ。」
「は~い。」
毎朝同じ声掛けに、同じ声のトーンでそれに応えるハニ。
いつも通りグミが、玄関先まで送り出して学校に向かう。
「ハニちゃん、これ・・・・お守りよ。テストが終わって成績が出たら開けてね。」
グミがやたら嬉しそうに、綺麗な布で作られた小さな袋をハニの手に握らせた。
スンジョはため息を吐いた。
まるでハニとお袋が本当の親子の様だ。
しかしなんだ?あの派手なお守りだと言って渡した袋は・・・・・・・・
何か気になるが、まぁ大した物ではないだろう。
その袋が大きな問題になるとは、今のスンジョとハニには想像もつかなかった。
学校に行くまでの通学路は、テスト当日ということで教科書を広げて勉強をしながら歩いている生徒が多かった。
「私も勉強しないと・・・・・・・」
「やめておけ・・・・・」
スンジョはハニが鞄から教科書を出そうとしていた手を止めた。
「今教科書を広げて勉強をすれば返って悪い結果になるんだ。」
「へぇーそうなんだ。スンジョ君はいつも、本を読んでいるけど教科書じゃないの?」
「教科書なんて、一度しか見たことがない。先生の授業での話を聞きもらさずにしていればわかるだろう。」
そうさ、オレは一度目にしたり耳にしたりするだけで頭にインプットされるし、先生の話だけを聞いていれば十分だ。
校門の近くに来ると、いつものようにスンジョとハニは離れて歩き出した。
誰も二人が同じ家に住んでいることは知らないし、興味本位で聞いて来る連中には知られたくない。
足早に歩くスンジョの後を、ハニが小走りに付いて来る。
家に来たころは、家族以外の人間との同居が嫌だったが、今は自分の後ろを付いて来るハニが気になって仕方がなかった。
いつも1組の教室で別れて、その後に特別に学校で話をする事はなかった。
1組の教室の前で7組のハニが通り過ぎるのを待っていた。
「試験・・・頑張れよ。」
思わず優しい声にハニだけじゃなくスンジョ自身ドキリとした。
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