スンジョの戸惑い 30
「オレがハニの事を好きだって?」
凍りつくような冷たい視線をグミに向けても、スンジョの母親だと思っているグミは動じないがハニは震え上がった。
「そうよ、だってあなたは今まで他人に無関心だったじゃない。だけど、ハニちゃんが来てからはその行動が気になっていなかった?」
図星だったのか、スンジョは言葉に詰まった。
「おばさん・・・・・・」
「ハニちゃんは気にしなくてもいいわ。お兄ちゃん、何を怖がっているの?」
「怖がるって?」
オレが何を怖がっているって言うんだ。
オレは何も怖くないし・・・・他人と親しくなるのが嫌なだけだ。
人の気持ちが信じられないんだ。
「スンジョは真面目すぎるのよ。まだ高校生なんだらもっと羽目を外してもいいのよ。こんな頼りない感じのママでも役に立つかもしれないわ。」
ハニがオレ達親子の会話から遠慮するようにキッチンに行って、コーヒーを淹れ始めた。
ハニがオレの方をチラリと見ると<喧嘩しないでね>と、口を動かしていた。
「パパもそうだったわ。真面目過ぎて、お互い合コンの人数あわせに参加しても気になる女の子に声も掛けないでただ黙って見ているだけ。なぜ、声を掛けないの?って聞けば、好きじゃないから話さないでって言われるのが嫌だからって。」
冷めた表情でコーヒーを飲むスンジョは視線を落としたまま。
ハニはどうしていいのか判らずただ黙って立っていた。
「で・・・・親父はどうしたんだ?その女の子はお袋だろう?」
「そうよ、ママよ。ママは、こう見えても人気があったのよ。数合わせの合コンでもママの場合はテハン大の学生を集めるために参加させられていたのよ。」
当時学生だったグミは、沢山の男子学生から交際を申し込まれるほどの美貌だった。
「パパは外見と同じようにすごく温かい感じがしたのよ、この人と結婚がしたいって・・・・・ふふふ、合コンの帰りにママがプロポーズをしちゃったのよ。」
「だから何なんだよ。お袋たちの馴れ初めと、今のオレは関係ないだろう。」
「んもぅ・・・・・女の子のハニちゃんの方が好きだって言ってくれたんでしょ?意地悪しないで応えてあげたら?」
お袋はどうしてもオレとハニが付き合って、結婚して欲しくて仕方がないみたいだ。
だけどオレにだって夢があるんだ。
夢?オレの夢って何だ?
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