スンジョの戸惑い 32
オレは、訳もわからずハニの部屋に入った。
その部屋は少し前まではウンジョが使っていたが、今はピンクトレースで統一されて甘い香りのするハニの部屋になっていた。
「ス・・・・・・スンジョ君・・・・・な・・・・・・な・・なに?」
何って・・・オレも判らない。
いくらちょっと前までウンジョの部屋だって言っても、今はハニの部屋になっている。
「静かにしろよ。・・・自分でもどうしてこんなことをしいるのか・・・いや・・」
オレは何をしたいのか本当に判らない。
締め切った空間で、全身の血が逆流するような・・・・・・
「お前がオレの心を乱すんだ・・・・・・・」
「えっ?」
ハニがキョトンとして、オレの顔を見ていた。
肉付きのある柔らかそうな赤い唇から白い歯が・・・・・・
何を考えてるんだ。
ゴクンとスンジョが唾を飲み込むと、ハニはビクッとして後ずさりした。
スンジョは動いた。
身体を硬直させて後ろに下がっているハニの腕を取って、素早く抱きしめた。
自分でもどうしてそんな行動に出たのか判らなかった。
ただ、何も怖がらずにオレを信頼するような瞳で見るハニを守りたいと思った。
抱きしめたハニは温かくて、もう何十年何百年も前からその温もりを自分が求めていた物だったような感じがした。
「ス・・・・・スンジョ君・・・あの・・・私達・・・・・まだ・・・・・」
ハニの声が思った以上に大きくて部屋の壁を通して、隣のウンジョの部屋まで聞こえるんじゃないだろうかと思うくらいに聞こえた。
「ごめん・・・・・・」
自分の身体からハニを放すと、後悔するような感覚がした。
後悔?
オレは今まで後悔などしたことがなかった。
「謝らないでスンジョ君・・・・・でも・・・だめだよ、好きでもない女の子を抱きしめたりしたら。私はスンジョ君が好きだよ、だからそんなことをしたら誤解しちゃうよ。」
「好き?好きって・・・・好きって・・・・人を好きになるって感情が判らない。」
不思議そうな顔をして、ハニはスンジョの顔を見てクスッと笑った。
「たとえばね、この人といたらドキドキするとか。自分を見てくれたら嬉しいなとか、嫌われないようにしたいずっとそばに居たい・・・・・・そう思う事なの。」
オレはそんなことを、今まで一度も思ったことが無かった。
自分以外の人に興味が無かったから。
だけど不思議だ、ハニがそばに居ると肩の力が抜けるようになり、守りたくなるようなそんな感情が出てくる。
「私がね、そう思うのはスンジョ君だけ。スンジョ君以外にはそんな感情は湧かないの。」
ハニの言葉が魔法のように柔らかそうな唇から出て、オレの心に染み入って行く。
「スンジョ君に振られちゃったけど、こうして同じ家にいるだけで幸せだよ。でも、スンジョ君に彼女が出来たら、私はきっと・・・・・・・生きていけないかもしれない。」
ハニがオレに彼女が出来たら・・・・・
その言葉に魔法を掛けられたように吸い寄せられて、ハニのビックリした目が段々と近づいて、唇が・・・・・・・・
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