スンジョの戸惑い 35
ハニが好き?
オレは頭が良い女が好きじゃなかったのか?
他人(ひと)に軽視されるのは嫌じゃなかったのか?
オレは完璧じゃなければならない・・・・・はず・・・・・・
それなのにいつ頃かハニが視界に入って来て頭から離れず、ハニの行動が気になって仕方が無かった。
美人でもないし、勉強も何も出来ないハニが、キラキラと輝いて見えた。
スンジョはハッと気づき、部屋を飛び出したハニの後を追った。
ハニは階段を降り終った所に座って泣いていた。
スンジョが近づいたのも気づかずに、シクシクと肩を震わせて両手で顔を覆って泣いていた。
そっとハニの肩に手を掛けると、飛び上がりそうにビクッとした。
その肩は思った以上に華奢で、守ってあげなければ壊れてしまいそうに細かった。
「ゴメン・・・・・オレ・・・・・人を好きになったことが無くて・・・・・今まで自分以外の人間に興味も持ったことさえないんだ。だから、自分のこの晴れない気持ちが何なのかさえ判らなかった。」
ハニの肩に置いた手に、少し力を入れてスンジョは自分の方にハニを向かせた。
「ハニは、オレが好きだって言うけど、好きって言う気持ちはどうして判るんだ?」
「えっ?」
突然のスンジョの問いに、顔を上げたハニは不思議そうにスンジョを見た。
「好きっていう感情とか感覚って、人に聞いて判るものじゃないと思うよ。私はスンジョ君の事が好きって思ったのは、本当に何も難しく考えないで好きって思っただけだもの。」
スンジョはイライラとして頭を掻き毟った。
「だから・・・・・オレは、それが判らないんだ。ここがこうだから好きなんだ。こうじゃないのなら好きじゃない・・・・・。そういうものがあるだろう?」
急にハニが優越感に浸ったように、ピンと背筋を伸ばした。
「人の気持ちってみんな違うんだよ。好きなら好きでいいんじゃないの?何も数学の公式みたいに難しく、頭で考えなくたっていいの。私はスンジョ君が好きなの。その人が気になって気になってどうしようもなくて、その人に自分を見てほしい知って欲しいっていうのが好きなんだと思うの。」
「もしかして、スンジョ君・・・・私の事が好きだったりして?」
ハニは冗談のつもりで言ったのだろう。
でもスンジョにはそう伝わらなかった。
「ハニが好きなのかもしれない。」
ポソリと言ったスンジョの言葉が、誰もいないペク家のリビングに響いた。
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