スンジョの戸惑い 36
「からかわないで・・・・」
「からかっていない。ハニが言ったことがそうなら、オレもハニが気になって仕方がない。」
表情も変えないで、淡々と言うスンジョの顔を不思議そうにハニは見ていた。
それでもスンジョはスンジョなりに、気持ちの揺れが顔に出ていると思っている。
今までハニに何の興味もないどころか、女の子に対してそんな感情を持ったことなど一度も無い。
「・・・・・・・・・・」
「お前、オレが勉強を教え始めた時さ、全く出来なかったよな・・・・。」
バカにしたような言い方ではなく、数日前の事なのに、随分と昔を思い出すような顔をしてスンジョは言った。
「初めて見たんだ・・・・・・」
「えっ?」
「オレは・・・・・他人がどうなろうと気にしたことが、今まで一度も無かった。それなのに、基本問題さえできないお前が、オレなら人瞬きをしただけで解けてしまう簡単な問題さえも諦めもしないで必死になって・・・・問題が解けた時に、バッカじゃねぇのって思うくらい嬉しそうに喜んで・・・・・そんなお前が輝いて見えて、綺麗だなて思ったんだ。」
ハニはスンジョと同居して、一緒に勉強をしていても遠かったのが初めて近づいたように思った。
固く閉まった心の扉が開いて、他人を・・・ハニだけを受け入れ始めた。
「それからなんだ、前は鬱陶しいとか、はた迷惑な存在だとかそんな風に思っていたのだって、他人が入り込むのを拒んでいた自分が、もしかしたら変わってきているんじゃないか、気になり始めてから些細な事までお前の行動を見ていた。さっき、お前が言っていたことで気が付いたんだ、ハニが好きだって。」
オレはオレが振ったハニに告白をした。
口から心臓が飛び出るというのはこういうことなんだろうか。
バクバクと大きく打っている鼓動がハニに聞こえるのじゃないか、他人(ひと)に無関心だったオレが、初めて意識した相手がハニだった。
触れてみたいと思って触れたのがいきなり唇で、多分ハニにとってもファーストキスだろう。
「本当に私の事が好きなの?好きってことは、私がスンジョ君の彼女になるってことでしょ。」
「そうなるな。」
ハニはクスクスッと笑うと、顔を赤らめてスンジョの腕をとった。
ハニから香る甘い香りが、スンジョの開いた心の扉が更に軽くなって、そっとハニの華奢な背中に手を廻した。
自然とスンジョはハニを抱きしめるようにして自分の胸の中に収めた。
ハニの耳にはスンジョの鼓動が、スンジョは自分の胃のあたりに伝わるハニの鼓動がふたりとも同じ速さで動いていた。
トクトクトク トクトクトク トクトク・・・・・・
誰もいない二人だけの夜。
それが二人の気を許したのか・・・・・・一気に心が近づいた。
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