スンジョの戸惑い 37
水を得た魚のように、ハニは恋愛について力説始めた。
お前がそんなこと言えるほど、恋愛経験なんてないことくらい知っている。
どうせ雑誌からの都合のいい所だけを覚えた知識だろうが、クルクルと表情を変え、機関銃の如くまでとは言わないが、永遠に止まりそうもない話。
そんなハニを見ていると、いつもは一秒も狂うことなく9時に眠ってい るから、この時間は眠いはずが、妙に頭が冴えて欠伸を噛み殺しながら聞いていた。
おじさんは仕込みで店に泊り込んで、お袋たちは一泊で旅行に行っている所為か、リビングでいつの間にか眠りこんでいた。
それがまずかった。
夜中に肌寒く感じて、無意識にハニを抱き寄せていた。
ソファーに腰掛けて、どちらが先に眠ったのか判らないが、ブランケット一枚に包まれて二人で眠っていた。
おまけにオレはシャツの前ボタンが知らない間にはずされて、その隙間にハニの手が入っていたし、もっと厄介な事にハニのパジャマは・・・・・
昼ごろに帰ってくるはずのお袋たちが、親父の『二人が心配だ』という言葉に早めに家に着いたことなど知らなかった。
「あらっ!」
「ママ・・・・・・・ス・・・スン・・・・」
「お兄ちゃん・・・・・・・」
その気配で玄関の方を見ると、固まっている親父とウンジョ。
それと対照的に、お袋の、嬉しそうな笑顔。
「お・・・・おい!起きろ・・・」
「う・・・うん・・」
スンジョに強く揺り動かされて、やっと目が覚めたハニは大きくノビをした。
「おはよう・・・・スンジョ君。」
腫れぼったい目で幸せそうに笑ってオレを見るハニにオレは合図を送った。
最初は寝ぼけていたハニだったが、鈍いハニでもさすがにお袋たちの視線に気づいた。
「お・・・・おばさん・・・おじさん・・・・・・・・・」
お袋の目がキラリと輝いた。
「お兄ちゃん!ハニちゃん、ママたちがいない間になにがあったのかしら?」
お袋達は完全に誤解していた。
まあ何もなかったとは言えないが、お袋が言いたい事はオレたちにあったこと以上の事を期待しているのだが。
ハニの掛け違えたパジャマのボタンは、誰が見ても勘違いするだろう。
おまけにオレはシャツのボタンは全開だし・・・・・
「おばさん・・・・な・・・・何も・・・・だた・・・・・」
「ただ?」
お袋の執拗に聞いて来る事に慣れていないハニは、誰かが止めないと話してしまうだろう。 マズイ・・・・・
「明け方まで話し込んだだけだ。ハニ・・・・・・まだ眠いだろう、さっき寝たばかりだから。」 「うん・・・・・・・」
「寝るぞ、オレもさっき寝付いたばかりだから、昼ごろまで静かに寝かせておいて欲しい。」
このままでは済まないかもしれないが、とりあえずこの場は逃げ切るしかない。
お袋の早とちりと、親父の性格を考えると、このまま何もなかったかのように終わることはないが、面倒なことにならなければいいが・・・・・・
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