スンジョの戸惑い 42
トコトコと、付いてくるハニの足音。
時々振り返りながら、スンジョはハニに声を掛けた。
「おい!豚足。速くしないと置いて行くぞ。」
スンジョがハニに向かって言った言葉に、顔を赤くして口を尖らせて走って近づいた。
「ト・ト・豚足って!!!どういうこと?」
「太くて短い脚だろ?ハニの脚は。」
スンジョはハニの顔を見てそう言うと、振り上げたハニの手を握ってまた歩き出した。
「スンジョ君が長すぎるだけよ・・・・・・並みの脚の太さだし・・・・・短い方じゃないよ・・・」
ブツブツ言うハニの声を聞いてニヤッと笑った。
「オレはハニの豚足が好きだけどな・・・・・」
急に機嫌を直してスンジョの腕にぶら下がるようにしがみ付いた。
「本当?それなら許してあげる。」
高級住宅街の街並みを抜けて駅に行く道は、まだあまり人も歩いていなかった。
「あまりくっつくなよ・・・・・お前の無い胸が余計に無いって実感するだろう。」
「スンジョ君のエッチ!」
自分の気持ちに素直になるとこんなに朝の空気が美味しいのかとスンジョは思った。
ハニの脚が太くて短くても、胸が無くてもハニのその笑顔が一番好きだから、そんな顔が見たくてからかってみたくなる。
「ハニ、地下鉄の駅に近づいたから離れてくれよ。」
「どうして?」
「ハニと一緒に住んでいる事も、オレがハニの事を好きな事も、まだみんなに知られたくないから。」
少し不満そうな顔をしたハニの頬にそっと唇を付けると、耳元でそっと囁いた。
「ハニの事を大切にしたいから。」
スンジョらしからぬ言葉を言って、片手をあげてハニの先を歩いて行った。
出勤・通学で混雑する地下鉄の列車の中、一際背が高くて綺麗な顔をしたスンジョを見つめる女子学生や通勤の女性。
澄まして知らん顔をして、スンジョはいつもの本を読んでいた。
毎朝同じことの繰り返しで、電車から降りる頃には、いつもスンジョのポケットやカバンの中はアドレスを書いたメモが入れられていた。
それを電車のドアが閉まらないうちに、毎朝同じごみ箱に捨てていた。
「また今日もスンジョ君のポケットにメモを入れているけど、そんな事をしても無駄なのに・・・」
ハニはスンジョの周辺にいる、女の子たちをチェックしていた。
その時ハニの視界が塞がれるように立つ人が声を掛けた。
「あの・・・・これ・・・」
差し出されたメモを辿るようにして顔を上げると、パラン高校のスンジョの次に人気のある、テハン高校一人気のある男の子が立っていた。
「オレのアドレス・・・・・連絡して・・・・・」
そう言うと、その男の子は何事もなかった顔をして隣の車両に移った。
「何?私なの?」
メモを開けると、スンジョと同じようにきちんと書かれた文字で、自分のアドレスとその下に一言が書かれていた。
<毎朝、君を見て気になるから一度話をしたいな。連絡を待っているよ>
初めて貰ったアドレスが掛かれているメモに、自分には好きな人がいるから会えないと言うつもりで携帯を開いた。
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