スンジョの戸惑い 48
不機嫌なスンジョの周りを、いつものように沢山の女の子たちが取り囲んでいる。
スンジョの事情も知らない女の子たちは、アドレスを書いた手紙を諦めもせずにスンジョのポケットやカバンの隙間から入れていた。
毎朝決まった車輛の決まった座席に座るハニが、そちらを向いても別の車両に乗っているのかそこには座っていなかった。
一緒の家に住んでいることも、当然スンジョがハニを好きだと言うことも家族以外誰も知らない。
パラン高校の最寄りの駅のホームに電車が停まると、周囲の女の子たちを全く無視するように押し退けてスンジョは降りた。
それに続いて女の子達も少しでもスンジョの近い所を奪うように降りた。
ダストボックスの前にスンジョは立ち止まり、ポケットの中の手紙やカバンの中に入れられた手紙をおもむろに取り出して、封も開けずにそのまま無情に投げるように捨てた。
「そんなぁ~」
「うっそぉ~」
という声も、スンジョのその行動も毎度の事なのか、怒る女の子たちはいなかった。
大体が、一度ではメモを見てもらえないことくらい判っていたから。
どうせオレの外見だけが目的なんだろう。
空っぽな頭の中の女が纏わりつくと、鬱陶しくて仕方がない。
ハニのようにどうして隣りで、無欲で純粋な顔で笑っているだけでホッとできる子はいないのだろう。
そんな風にオレが思っていることに、どうして気が付いていないんだろうかハニは・・・・
それにしても、誰と学校に行ったんだ?
テハン高校のキム・アインか?
一緒に住んでいることは知らないのだから、ポン・ジュングじゃないことは確かだ。
スンジョが改札を通ろうとした時、改札からホームの方に向かうキム・アインとすれ違った。
アインはスンジョをチラリと見て、余裕ありげにフッと笑った。
それがまた不機嫌なスンジョを苛立たせた。
その日は一日近寄りがたい雰囲気で、誰も近寄ることも出来ずその漂う空気を感じるだけで恐ろしくも思えた。
校庭を歩いているハニは、そんなスンジョの思いも知らず、ミナやジュリと楽しそうに話しをし、その間に割り込もうとしてふざけているジュングを見ながらコロコロと笑っていた。
「スンジョ、修学旅行は誰のグループに入る?」
話しかけたクラスメートの方をジロリと見ると、一瞬その子は震え上がったたが、グループ行動を纏める係として恐る恐る聞いた。
「そっちで決めてくれ。」
一言言っただけで、スンジョはまた外にいるハニの方を見た。
「へェー、テハン高校のキム・アインからメモをもらったの。」
「うん・・・その人の事は、あまりよく知らないんだけどね。」
「そりゃそうだ。ハニはペク・スンジョしか眼中にないんだものね。有名だよキム・アインって。」
ハニはずっとスンジョに片思いをしていた。
その事は親友のトッコ・ミナとチョン・ジュリ、それにハニの事を好きなポン・ジュングは知っていた。
ハニがスンジョに片思いは親友だけではなく、けっこうたくさんの人たちも知っているくらいに有名だ。
「パランのペク・スンジョとテハンのキム・アイン。二人とも天才でスポーツ万能でイケメン。眉目秀麗って言うんだったかな。おまけに大企業の子息と言うところも同じで。」
感心したような顔でミナとジュリの話しをハニは聞いていた。
ハニはスンジョ以外には全く興味が無いから、そんなに有名なアインの事は何とも思わなかった。
「ハニや~、何しとんのやぁ~」 顔を崩せるだけ崩してハニの方に近寄ってくるジュング。 ハニはスンジョに片想いをしているが、ジュングがいつもハニに纏わりついているからなのか、二人は付き合っていると思ている人は沢山いた。
「修学旅行は男女別になるけど、ミナにジュリ、オレの大事なハニを守るんやぞぉ。」
「あんたに言われなくても、ハニは私たちといれば大丈夫なことくらい知っているでしょ?」
そんなミナたちの話しも、なんだか気乗りしなかった。
昨日からスンジョと気まずいまま、高校生活最後の大イベントの修学旅行の日が近くなって来ていた。
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