スンジョの戸惑い 49
日曜日のペク家は、穏やかな川の流れのように静かな時を、家族が揃って過ごしている。
ただ、スンジョだけ・・・もしかしたら、スンジョのことを大好きでいつもその姿を追っていたなウンジョもそう思っているかもしれない。
ハニがペク家に来てからは、静かな時間の流れが止まり、騒々しいもの音や賑やかな笑い声が、依然に増して、母グミが元気に動き回っている。
スンジョは、お決まりのソファーの場所に深く座り、分厚い英語ではない外国の本を読んでいた。
ハニと話しをしなくなってから、何時も利用する本屋に行き衝動的に買って来た。
その本のタイトルが判るのは、スンジョの他に父スチャンだけだ。
普段から無口な父スチャンは、グミとは違う思いで、大人になる過程のスンジョの苦悩を黙って見ていた。
スンジョ、ママに反抗したい気持ちも判るけど、ハニちゃんと仲良くして欲しいな。
パパの大親友の娘は、本当に明るくて良い娘だよ。
そんな子が、ママと同じようにスンジョには似合と思うのだけどな。
お前がいつも言っている頭の良い子もいいけど、つまらない毎日から逃げたいお前の助けにはならないよ。
パパは、静かにハニの淹れてくれたコーヒーを口に運んだ。
グミがそんな静かな空間を壊す様に、妙に燥いで話しを始めた。
「お兄ちゃん、そう言えば修学旅行はもうすぐだったわよね。」
「そうみたいだな。」
スンジョの不機嫌は、あれから一週間が経過しても変わらない。
むしろ冷たい話し方は、氷以上に冷たさを増していた。
「予定表とか有ったらママにも見せてくれる?」
「余計なことをするなよな、旅行先に付いて来たりしたら迷惑だからな。」
「スンジョ!ママに迷惑だなんて言葉を言ってはいけない。いくら自分が苛々しているからってママに八つ当たりはするものじゃないよ。」
珍しくスチャンに、母親への態度を注意されたスンジョ。
「言い方が悪かった・・・・・・オレとハニがどう行動を取るのか、付いて来たりしないで欲しい。」
「付いて行かないわ。代わりにハニちゃんと付き合っていることを公表して、楽しい修学旅行にしたらどう?」
「付き合ってない。」
スンジョとハニが口を利かなくなった時から、付き合っていると言うことを皆に話したらどうかと言ったらどうかと言うと、スンジョがムッとしていた。
「付き合ってないって・・・・好きな女の子がいたら普通は・・・・」 「好きだとは言ったのは、嫌いじゃないからだけだ。集中して本が読めないから部屋に行く。」
グミの話をまったく聞く耳持たずのスンジョ。 近寄りがたい雰囲気でハニは何がなんだか判らなかった。
「本当にスンジョはどうしてあんな言い方しか出来ないのかしらね。嫌いじゃないから好きだなんて。」
何とかして二人を結び付けたいグミは、スンジョの態度に少々呆れていた。
呆れているのはグミだけじゃなく、ある意味スチャンも呆れていた。
スチャンが呆れたのは、スンジョにではなくグミに対してだった。
ハニは、ずっと続いているスンジョの冷たい態度に耐える限界に来ていた。
「ハニちゃん、元気を出して・・・・そうそう、これ修学旅行の自由散策で着てくれる?」
グミはハニに袋を渡した。
「おばさん・・・・・」
「修学旅行は制服だけど、自由散策は私服でしょ?旅行に行く時は下着から洋服まで新調するものなのよ。遠慮しないで、来てくれる?」
有名ブランドの袋をハニは受け取るとき、スチャンも是非にと言っている顔でハニを見ていた。
「いつもすみません、他人の私に良くしてくださって。」
「何を言ってるの。ハニちゃんのおばあちゃんやお父さんに、パパが随分とお世話になったじゃない。それに、私はハニちゃんを実の娘のように思えて可愛いの。お願いね、絶対に着てね。」
何か有りそうな修学旅行。
ハニは高校生活最後の思い出が、大変なことが起きるような気がした。
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