スンジョの戸惑い 51
「お兄ちゃん、この服を新調したの。自由行動の時には必ず着てね。靴もよ。必ずね!」
スンジョにはしつこく言ってはダメね。
あの子は妙に勘が良いから・・・・ううん警戒心が強いのよね。
これで、当日が楽しみだわ。
スンジョはグミの言い方に、何か気になるものもあったが、いつも買っているブランドの服だったから、特別警戒をすることも無かった。
特別にファッションに興味があるわけではないが、奇抜なファッションは好みではない。
動きやすく、それでいてシンプルな物。
それだけはスンジョはいつも洋服を用意してくれているグミに伝えている条件だった。
グミが用意した服をキャリーバックに詰めながら、派手ではないが気になる文字がプリントされている事に気がついた。
その文字だけでは意味が伝わらない訳ではないが、それにつながるものがあるようにとれる言葉だった。
「修学旅行だからって、別に新調しなくても良かったのに。旅行には衣類は新調する・・・・・お袋は今までこんなこと言った事なんて一度もないのに。」
明日からの修学旅行の準備をしながら、これから起きることをスンジョは知らなかった。
一方、ハニも荷物を詰めながら、持ち物のチェックをしていた。
「やっぱりお菓子は持って行かないとね。ヘアケアセットはジュリが担当だし、ミナがグループ散策の準備はしてくれたし・・・・・結局私は、カメラ係なんだ。」
女の子の持ち物は多い。 絶対にはずせない持ち物に、サニタリー用品。
ハニは一度も狂ったことが無かったが、痛みは酷い方だった。
「やだな・・・・折角の楽しい修学旅行なのに、今日から来るんだもの・・・・痛み止めは明日の朝出る直前に飲むから出しておかないと。」
ハニは机の上に、常用している鎮痛剤を置いた。
スンジョと口を聞かないまま、楽しみにしていた明日からの修学旅行が急に憂鬱になって来た。
当然のようにスンジョの周りには女子たちが取り撒いている事は判っている。
「誰が告白するか」
そんな話が7組では日常茶飯事だが、来年は受験学年。
殆どの生徒が難関大に進路を決めている1組の中にも、修学旅行の間に告白をしようと思っている何人もの女子がいる事は判っている。
好きだと言われたが、付き合っていない。
嫌いじゃないことは確実だが、もしスンジョが自分以外の女の子に告白され付き合う様になったらと思うと、早く布団に入っても寝付けなかった。
スンジョはスンジョで寝付けなかった。
ハニがアインと親しげに話をしていたのを見かけてから、ずっと心の奥で燃え上がる熱い物を感じて寝られない日が続いている。
好きだけど付き合っていない。 同じ家に同居しているのだし、好きだと言うだけではダメなのだろうか。
来年の受験学年を前に、好きな女の子と思い出を作るのだと言っている男子は多い。
ハニは気が付いていないだろうが、意外と男子に人気がある。
今まで恋愛に興味が無かったスンジョも、ハニへの想いに気が付いたころから、多少気になるようになっていた。
頭は悪いが、明るくて誰とでも分け隔てなく接してくれる。
笑顔は温かくてホッとするが、顔だって意外とかわいい。
それを聞いたのは、ハニがアインと話しをしていたのを見た次の日だ。
誰に言われなくても、言葉足らずの自分だとは思っている。
ハニを傷つけたことが、悪いこととは思ってはいるが謝る気はない。
このままではいけないことも充分判っている。
別々の部屋に眠っていても同じように、何度も寝返りを打つスンジョとハニ。
お互いが眠れない夜を過ごしていることは知らなかった。
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